弱冠21歳のプロゴルファー・松山英樹が10月3日~6日にかけてアメリカで開催された団体対抗戦「プレジデンツ杯」に出場。副将として一緒に参加した丸山茂樹は、松山の活躍を次のように話す。

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 いやー、大変でした。とんでもない雷雨で、試合は断続的に中断。連日の日没サスペンデッドですよ。

 米国選抜と世界選抜(欧州を除く)の団体対抗戦「プレジデンツ杯」(10月3~6 日、米オハイオ州ミュアフィールドビレッジGC)の話です。僕は世界選抜の副将(プレーはしない)として参加してきました。1998年以来となる世界選抜の勝利はなりませんでしたが、初出場の松田英樹にとっては、最高の1週間だったのではないでしょうか。

 英樹は世界ランク2位で今年のマスターズを制したアダム・スコット(オーストラリア)とのペアでダブルスを4試合、シングルス1試合をやって、1勝3敗1分けでした。

 実はアダムの調子が悪くてね。3日間もあんなに不安定なアダムは見たことないな。英樹が「これでもか」「これでもか」と寄せても、全部アダムが外しちゃって。そうなると英樹にも焦りが出る。そりゃそうですよ。援護射撃してくれるはずが、自分が援護することになるんだから。

 だからアダムが本当に感謝してましたよ。「彼はメジャーを勝てる逸材だ」って。本当にそこまで言ってましたからね。

 初日フォアボール方式(2人のうち、いい方のスコアで競う)のダブルスでは、最終18番でセカンドをピン奥50センチにつけ、引き分けに持ち込みました。ああいうプレッシャーのかかるところでスーパーショットを繰り出せるというのは、みんながもう、驚いちゃうわけです。

 21歳でここまでのパフォーマンスができるってのは、すごいなあと感心しましたね。初日の最初のティーショットもね、英樹が4人の中で最後に打ったんだけど、明らかに他の3人よりいい球でした。いい度胸してますよ。本人は試合前に「緊張してます」なんて言ってたけど、緊張感をバネにできるんでしょうね。そういうふうに見受けました。

 ただ、気になったところはアドバイスしました。とくに勝負どころでの思い切りについてですね。マッチプレーは普段のストロークプレーと違って、ダメもとで最大の武器を利用するしかないんです。普段なら「ここは安全に乗せとこう」ってとこでも、そこで勝負をかけないと、次はない訳です、マッチプレーは。そしたら無理をしてでも、リスクの高いショットをするしかないんですね。

 相手が先にバーディーとって、自分がバーディーパットを打つとする。そこでショートするなんてのは、これはもうあり得ないんですね。打ちきるしかないんですよ。そういった思い切りの部分で、ひとつふたつ指摘しました。彼に思い切りがない訳じゃないんですよ。ただ、状況判断のミスがあったので。

 世界選抜のみんなが、「ヒデキは素晴らしい」と僕に言ってきました。これでまた、世界に名刺を配ったことになります。いよいよ米ツアーが開幕。プレジデンツ杯を一緒に戦ったメンバーも、英樹をサポートしてくれるでしょう。僕自身もかつて、世界選抜のチームメートにあちこちで声をかけてもらって、本当に助かりましたから。

 英樹自身は注目されても全然気にしてなくて、「勝手に見てれば?」という感じ。何も心配せず、見守っていきたいと思います。

週刊朝日  2013年10月25日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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