「おひとり様」という言葉も流行したが、近い将来、日本は日本はケタ外れに「一人」が多い社会になる。2030年ごろには約4割が単身世帯になり、男性の3人に1人、女性の4人に1人は「生涯独身」だ。家族を作りたくても作れない「家族難民」とも言える人もいる。しかし一様に独身と言っても、経済状況や価値観などは大きく異なる。40代男性のケースを紹介する。

■NPO職員の42歳男性北海道出身。神奈川県で一人暮らし

 もうすでに家族難民です。大学を中退してフリーター、派遣、日雇いなどを繰り返してきました。ギャンブル依存にもなり、借金が膨らみました。その支払いで親や親戚に迷惑をかけ、音信不通状態に。生活保護を受けるため行政が親に連絡したところ、父は余命3カ月で、母は認知症だとわかりました。

 もう父は亡くなりました。父のわずかな遺産で今のアパートで暮らし始め、3年前からギャンブル依存から立ち直るためのNPOに通い、今ではそのスタッフとして依存に苦しむ人の援助をしています。いまでも生活保護を受けていますが、NPOから保護分を給与としてもらえるめどが付き、近く生活保護から抜け出せそうです。

■出版社正社員の47歳男性広島県出身。東京都で一人暮らし

 3年前に、10年連れ添った妻と離婚しました。一人になってみると、趣味や交友の幅も広がり、思っていたより孤独を感じている暇がありません。ももクロにはまったり、夏の音楽フェスに行ったり。40代で始めたギターを一日中練習してライブに備えたりも。老人ホームに入ってもバンドを組んで楽しくやれる自信はありますよ。

 子育てをしていれば、喜びも悩みも日々続いていくのだと思いますが、自分は「高等遊民」のような気楽な立場で、趣味にかけるお金や時間もある。でもその一方で、生活を充実させなければわびしい人生になりかねないというプレッシャーもあります。自分一人で「暇つぶし」するのもそれなりに大変ということかもしれません。

AERA 2014年1月27日号より抜粋