『Machine Head』Deep Purple
『Machine Head』Deep Purple
『Made In Japan: 25th Anniversary Edition』Deep Purple ※リマスターされて、ジャケットも変更した
『Made In Japan: 25th Anniversary Edition』Deep Purple ※リマスターされて、ジャケットも変更した

 音楽に特化したことではないのだが、調べものをしようとするとき、まず最初にインターネットで検索することが多くなった。十数年前、インターネットがこの世に出てきた当初は、文字と画像がほとんどで、その情報の内容についても当てにならないものが多かった。しかし、最近では、情報の種類も、音や映像も当たり前になり、代表的な過去のヒット曲を検索すると、かなりの率で、簡単に聴くことができるようになってきた。それも、動画つきだったりする。
 いい時代になったものだと思う反面、アルバイトをして、小遣いを貯め、やっと買ったレコードを、なんどもなんども、それこそ、大好きになるまで繰り返し聴いた自分の若いころのことを思うと、音楽に対する気持ちが、世代によって異なるのだろうなと想像できる。

 もっとも、音楽と科学テクノロジーの関係は、インターネットにはじまるわけではない。
 たとえば、ラジオやテレビの出現も、その時代の音楽ファンに、大きなインパクトを与えたはずだ。スイング・ジャズなどは、ラジオとレコードの普及を背景に大ヒットしたと言ってもよいだろう。
 テレビと音楽を考えると、MTVなどをはじめとするプロモーション・ビデオやライヴ映像の放送などがはじまった。
 インターネットが発達して、ただで音楽が聴けるようになったと考えるのもおかしな話で、ラジオやテレビも無料の音楽配信であったのだ。違いということでいえば、インターネットが出てくるまでは、一般利用者は、放送される数少ないコンテンツを楽しむ、いわば受身であった。しかし、インターネットの時代になると、そのコンテンツの数は爆発的に増え、それらの中から検索して、選ぶことが可能になり、また、すべての人が、たとえば、自分たちが演奏した曲などを、たやすく配信できるようになったということが大きな違いだ。

 昭和31年生まれのわたしにとって、生まれたときからラジオはあったが、テレビはなかった。こども時代、我が家にテレビが来た。東京オリンピックの年、テレビが自分の家にない子は、クラスに1名だけだった。テレビは、いつかカラーになり、レコード・プレーヤーを買い、ステレオになり、テープ・レコーダーやカセット・テープが普及し、ラジオがFMステレオ放送になり、レコードからCDに変わってきた。そして、インターネットだ。
 音楽を聴くということにおいては、なかなかに魅力的な時代を歩んできたなと思う。

 それから、そのころの音楽は、今よりも、時代と共にあったなと思う。
 もちろん、今でも、流行の音楽というものがあるし、同時代の者同士の思い出の曲というのもあるだろう。しかし、わたしたちの時代は、新しいバンドの新しいアルバムを聴くのが精一杯だった。アルバムは高価で、ほしいものがすべて買えるわけではなかった。だから、ラジオやテレビで、自分たちの聴きたい音楽が流れるという情報を求め、FMの番組表が掲載されている雑誌を購入し、聴き逃さないようにしたのだ。まだ、CDもなく、もちろんCDレンタルもなかった。だから、過去の音楽や好みの音楽のルーツを探るまでの余裕がなかったのだ。

 そんな時代に、よく比較されるグループがあった。
 たとえば、ビートルズとローリング・ストーンズといった具合で、当時、音楽の話をしていると、決まって、どちらが好きか?という二者択一を求められた。その選び方で、その人の音楽の好みや、人柄まで、わかるような気がしていた。

 そんな比較のひとつに、レッド・ツェッペリンとディープ・パープル、どっちが好きか?ということが、話題になった。
 『レッド・ツェッペリンIV』が、1971年11月に発売された。中学3年だったわたしは、誕生日のプレゼントということで、生まれて初めて、このアルバムを予約して発売日に買ってもらった。
 そして、その次の年の72年3月にディープ・パープルの『マシーン・ヘッド』が発売される。友人が、これを買った。
 一番いいステレオを持っている友人の家に、お互いのレコードを持ち寄って、聴き比べをするわけだ。そして、当然の流れとして、パープルとツェッペリン、どっちが好きか?という質問を突きつけられる。ま、わたしは、突きつけたほうかも知れないが。
 しかし、どちらが好きか?と聞かれても、すべてのアルバムを聴いたりしているわけではなく、買ったばかりのこれらの新譜と、その前の『レッド・ツェッペリンIII』や『ファイアー・ボール』を聴いたくらいのものなのだ。
 しかし、概ね、答えは決まっていた。自分がアルバムを買ったほうのバンドが好きなのだ。そして、お互いの相手がよいといっているバンドも、「でも、こちらも、なかないよいよね」などとほめ合うのだ。少し、時間がたって、飽きてきたころ、お互いに、交換して聞くためにも、ここで大きく否定することは、得策ではない。

 わたしは、ツェッペリン派ではあったけれど、ディープ・パープルも、友人から借りて、よく聴いた。『イン・ロック』から『ライヴ・イン・ジャパン』までが、わたしのリアル・タイムのディープ・パープルだ。今、振り返ってみれば、イアン・ギランがボーカルだった時代だ。
 同じころ、『ジーザス・クライスト・スーパースター』というレコードもよく聴いた。ミュージカル『キャッツ』や『オペラ座の怪人』などでも知られるアンドリュー・ロイド・ウェバー作曲のミュージカルだ。イエス・キリストの最後の7日間を描いたロック・ミュージカル。オリジナル・キャストのイエス・キリスト役が、イアン・ギランだ。後に、映画にもなり、日本では、劇団四季により上演されている。

 レッド・ツェッペリンが、ドラムスのジョン・ボーナム事故死の後、バンドを封印したのとは違い、ディープ・パープルは、メンバーをめまぐるしく変えながら、それも、出たり入ったりを繰り返しながら、今に至る。
 今回のボーカルも、イアン・ギランだ。
 72年の『ライヴ・イン・ジャパン』を久しぶりに聴きながら、この文章を書いた。[次回12/11(水)更新予定]

■公演情報は、こちら
http://www.udo.co.jp/Artists/DeepPurple/index.html