NYCは自転車で走るにはとても快適な街。こんな風にステーションが街中にいっぱいあって、どこにでも気軽に立ち寄れるのです! (撮影/谷川賢作)
NYCは自転車で走るにはとても快適な街。こんな風にステーションが街中にいっぱいあって、どこにでも気軽に立ち寄れるのです! (撮影/谷川賢作)
CDもカセットもないLPレコードのみ! の宣言が強い。NYCのレコード店は独自の活路を見いだそうとしています   (撮影/谷川賢作)
CDもカセットもないLPレコードのみ! の宣言が強い。NYCのレコード店は独自の活路を見いだそうとしています   (撮影/谷川賢作)

 今回は某大手CDショップで働く息子も一緒に行ったので、ぜひNYC(ダウンタウン主体ですが)のCDショップを片っ端からciti bike(NYCでいつのまにか浸透していたレンタサイクル。しかし80年代後半に初めて行った時とくらべ、考えられないくらい安全な街になったNYC。自転車に乗ってどこへでも行けるなんて!)で見て回ろうということになった。

 その某大手CDショップのバイヤーさんは、年に数度、相当数のCDやLPを買い付けに行くとの情報を得ていたので、NYCではまだまだ掘り出し物のCDがいっぱい見つかるのではないかという淡い期待もあったのですが、見事に裏切られました。前回「状況深刻」と書いたとおりです。Googleマップで見ても軒並み「閉店」表示が現れ、かろうじて生き残っていると思われる店も閑散としていて、未整理の状態で山積みされているCDも多く、閉店まぎわ感が漂っている。きっとプロの「買い付け」のネットワークは別にあるのだろうな。

 CDにくらべLPレコード市場はまだ活気が残っている気がした。だが、これはあくまでも名盤を「骨董品」的な稀少アイテムとして取引しようという、コレクター&好事家の皆さんの世界のようだ。もちろん、いい装置でいい音を、というオーディオマニアの方々の世界も忘れてはいけないだろう。がんばれLPレコード。君たちにはまだ希望があるぞ!

 Apple Musicを“お試し”から“本使用”に移行させてしまった「後ろめたい私」(「ほめちぎ」第34回参照)には、なにも言う資格はないかもしれない。しかし『誰が音楽をタダにした?』(スティーヴン・ウイット著/早川書房・刊)という痛烈な本で明かされたように、パッケージとしての音楽はこれからどうなっていくのだろう。未来はあるのか。「“パッケージ”なんて言い方がおかしいんだよ。CDをミュージシャンの作品として持っていること。それがすばらしいんじゃん!」という息子の正論が耳にイタい。ただ、年とってだいぶくたびれてきて「所有という喜び&自縛」からそろそろ解き放たれたい(♪断捨離~こそが~人生さ~~。歌ってよ皆さん!)という父の気持ちも少しはわかってくれ!

 今大人気の『ブルージャイアント』という“熱血スポ根系ジャズマンガ”をご存知ですか? その主人公のテナーサックスプレイヤーの宮本大君が、師匠の助言に従ってジャズ武者修行に向かうのは、なんとミュンヘン! NYCはもはや“ジャズのメッカ”でもないらしい。

 まあ10日間の滞在で舐める程度では、NYCのジャズの最先端が今どこにあるのか、よくわからないのも当たり前でしょうが、どこかにあると信じたい。これだけ多くの若者たちがプロの道を目指しているんだし、ジャズの本場はNYCという強い思い込みもいまだにあるのは、きっと私だけではないはず。

 前から行ってみたかった、来年2月に閉店が決まっている「The Stone」は(THE STONE AT THE NEW SCHOOLとして、55 WEST 13TH STREETに移る模様)私が行った時は前衛もほんの少しだけ加味した、ブラスのグループが出ていました(編成はトランペット2、トロンボーン2、リード2、チューバとドラムス。ニューオリンズ系、フェリーニ、ミンガスのsound of love 等、編成から想像できるようなリラックスしたいい感じの音。芳垣安洋さん率いるOrqueata Libreのサウンドの香りが濃厚と言えばわかりやすいか)

 この店は、音楽監督のジョン・ゾーンが中心となって、来年2月までのすべてのブッキングが完了しているのがすごいのだが、皆さんも機会があれば閉店までにぜひ一度行ってみてください。「飲み物も販売物もないよ。あるのはライブ音楽だけ!」という矜恃がすごい。「みんな一度そこに戻ってこい」という姿勢をほめちぎりたい! 詳しくはこのサイトを見て。

 また行くぞNYC。待ってろよ! [次回、 6/19(月)更新予定]