第34回 ただ今、Apple Musicお試し期間中 |AERA dot. (アエラドット)

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第34回 ただ今、Apple Musicお試し期間中

文・谷川賢作

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Apple Music の画面を自撮り 「今日は何聴こうかな ルンルン(^^)」な気分です おまかせでいいのかオレ! (撮影/谷川賢作)

Apple Music の画面を自撮り 「今日は何聴こうかな ルンルン(^^)」な気分です おまかせでいいのかオレ! (撮影/谷川賢作)

10/1(木)のコンサートです 今年は積極的に芝居やダンスや映画とコラボしています(^^)

10/1(木)のコンサートです 今年は積極的に芝居やダンスや映画とコラボしています(^^)

 いつもの私だと「絶賛お試し期間中~!\(^O^)/」などと大はしゃぎしているはずなのだが、なぜか気持ちは高ぶらない。Apple Musicの画面をスクロールしながら「は~確かにこりゃあ数百万曲聞き放題と豪語するだけあるわ、ため息」という、なぜだか少しさびしい気持ちになってしまうのだ。私と同世代で「お試し」している人はまだ意外なほど少ないのだが、そんな中でお試し中の友人のパーカッション奏者のWK氏(私と同い歳の55歳)は会った時「おれ、これでいいかって気持ちになっちゃったんだよ」とこれまた言い訳まじりのような、申し訳なさのまじった捨て鉢な口調。でも彼のその気持ちはよくわかる。

 つまり理由はもやもやしたものなのだけど「大昔から連綿と連なる芳醇な音楽財産を、作品としてアルバム単体で購入せずとも、気軽に聴けてしまうことが(実際には「お試し期間」終了後は月額で980円かかるのだが)数多の人類遺産の音楽家たちに対して失礼な感じがする」のだ。で、おそらくそれは世代が上にいけばいくほど感じる後ろめたさで、若い人たちからは「あんたのその感覚が古いよ。Wikipediaをはじめ今はなんでもかんでもアーカイブ化されている時代なのだから、音楽だってそうなるのが必然でしょ。大体YouTubeに著作権だろうが肖像権だろうがまったくお構いなしにいっぱい音源がアップされているじゃないの」と言われてしまうだろう。確かにそう言われてみればそのとおりなのだが。いいのかなあこれで、とやっぱりウジウジ考える私は、ブツブツ言いつつも「お試し」しているのだからやっぱり偽善者なのだろうか?(^_^;

 ともあれ、ここではっきり断言しておきましょう。
 Apple Music は便利です。いまだに「CD派」な人はどうしても今聴きたくなった目指す一枚のCDの中のあの曲、を山高く積まれたグチャグチャなCDの中からイライラしながら探す手間が省けます。(あっこれはもちろん私のように整理が下手な人の話ね。。。)i-tunesにせっせと「CDからmp3へ移行中派」の皆さん。皆さんのコツコツとやった人力作業は徒労に終わったのかもしれません(T-T) が、これからはあなたがやりたかった、やろうとしていた「どんな曲にも今すぐにアクセスできる」の夢の時代に突入です。 

 Apple Music は楽しいです。無尽蔵な音楽の宝の山にいつでもどこでもアクセスできます(あっこれは言い過ぎ。WiFiにつながっていないとだめです)気にはなっていたのに、今までの人生で聴きのがしていたバンド、グループなどを、ポーンとさりげなく紹介してくれます。例えば?『少女時代』なんて名前しか知らなかったのだけど「はじめての少女時代(日本語曲)」なんていう曲リストがスクロールしていると突然画面に現れてくるわけです。で、ついつい「どれどれ」なんて言いながら聞き始めてしまう。「で、あら~聴かずぎらいだったけど、けっこういけるやん!」となる曲やグループも見つかる。ふだん聴いている好きなジャンルやバンドでも意外な選曲リストで「どやあ、これ~知らんかったやろ~ ふふふ(^^) 聴いてみ~」と迫ってくるわけです。(なぜにまたテンション上がると関西弁(^_^;)「イーグルス:隠れた名曲」とか「サイドメンとしてのビル・エバンス」とか「ロッカーによるレゲエソング」等々。興味をそそる選曲リストがFor Youのタグにわらわらと現れてくるのである。ワナワナ(震える私)

 で、結局ほめてる私? ほめてますよね。Appleの回し者? 違います!
 が、なんだろう。今ちょっとだけ「このもやもやした違和感」について真剣に考えてみました。つまり当たり前ですが、音楽を本格的に聴き始めた中学生時代からDJは常に自分自身だったのですね。自分でラジオを聞いたり、友達と情報交換したり、レコード屋に行ってドキドキしながら、なけなしのこづかいから欲しい5枚の内1枚を選んで買ったり(まさに清水の舞台から飛び降りるという)自分の限りない好奇心を少しでも満足させるがために必死になっていたのが、それがついに「今どうしても聴きたくなってしまった曲や、これは自分的にヒットに違いないと思われる、第六感の囁きで初めて聴く曲を自分でセレクトして、能動的に自分の意志でその曲を聴く」ということをも、ついに放棄してしまい、偶然向こうからやってくるのをただひたすら待つ。DJはApple Musicにおまかせ。と、そういう劇的な変化ということなのだろうか。

 でもこれも「まだ聴いていない音楽を発見する喜びはApple Musicにこそある」となってしまう?? そんなんやじゃ~~~(叫)

 う~ん。気持ちとしては褒めたくないけど、これはやはり試しに一度は使ってみるにかぎる、なのかなあ。。。どうにも歯切れ悪し(^_^;皆様のご意見お待ちしています [次回9/28(月)更新予定]


(更新 2015.9.14 )


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プロフィール

谷川賢作

谷川 賢作(たにかわ・けんさく)作/編曲家 ピアニスト

1960年東京生まれ。ジャズピアノを佐藤允彦に師事。演奏家として、現代詩をうたうバンド「DiVa」、ハーモニカ奏者続木力とのユニット「パリャーソ」に所属。また父である詩人の谷川俊太郎と、朗読と音楽のコンサートを全国各地で開催。80年代半ばより作・編曲の仕事をはじめ、映画「四十七人の刺客」「竜馬の妻とその夫と愛人」、NHK「その時歴史が動いた」テーマ曲等を手がける。88、95、97年に日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞。2014年度船橋市文化芸術ホール芸術アドバイザー。音楽を担当した最新映画は「カミハテ商店」「SAYAMAみえない手錠をはずすまで」。最新刊『げんきにでてこい』(カワイ出版)、最新CD『うたがうまれる』 谷川賢作オフィシャルサイトhttp://tanikawakensaku.com/

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