自分のこと以上にうれしいニュースが飛び込んできた。地球のテッペンで祝杯をあげたくなる。
 アップアップガールズ(仮)、8月31日「横浜BLITZ公演」のチケット完売!
 アプガにとって横ブリはとんでもなく深い思い入れ、いや、執念とさえいえるものが込められた場所である。理由については4月の横ブリ公演を収めたDVD『アップアップガールズ(仮)3rdライブ 横浜BLITZ大決戦(仮)』のMCやメイキング部分に詳しいけれど、とにもかくにも、その公演は満杯とはいかなかった。
 もちろんアプガは誠心誠意、今できるベストを送り届けてくれるグループであるから、たとえオーディエンスがひとりであろうと手を抜かず凄まじいパフォーマンスを繰り広げるであろうことはいうまでもない。が、アプガの目標のひとつが「横ブリを満員にすること」である以上、その目標を達成した彼女たちの笑顔を見たいのはファンとして当然だ。
 8月25日に渋谷AXで行なわれた「ジモドルフェスタ」の会場で、アプガは残り少なくなっていた横ブリ公演のチケットを手売りした。最後の1枚が売れたとき、メンバーは抱き合って号泣したという。ぼくもその知らせを聞いて、胸の奥が沸騰するように熱くなり、ふるえた。打ち上げ花火が100発ぐらいあがって、心の空に大きく(仮)という字を描いた。

 ここから話は8月中旬に戻る。

 好きになってしまったんだ、猛烈に!

 梶原一騎・原作の「巨人の星」に出てくる名フレーズだが、アップアップガールズ(仮)のファンは誰しもがこんな気分でCDを買い、ライヴに行き、応援しているに違いない。
 ひるがえって、ぼくはどうなのか。アプガのファンだ、と心から堂々といえるほどハマっているだろうか。
 そう考えると、なんだか不安になってくる。おかげさまで「アプリ」という文字を「アプガ」、ビリー・ジョエルの歌う「アップタウン・ガール」を「アップアップガールズ(仮)」と間違えるぐらいには成長したのだが、あれほど熱いステージでノックアウトしてくれるアプガに対し、自分はどこか煮えきっていないのではないか、激しさや狂度が他のアプガ・ファンに比べて圧倒的に足りないのではないか、と思うこともたびたびだ。

 果たして心底アプガに魅了されているのだろうか? アプガの凄みを満喫できているのだろうか? 「アップアップガールズ(仮)1stライブハウスツアー アプガ第二章(仮)開戦前夜」の知らせを耳にしたとき、それを試すときが来たと思った。
「アイラブユーOK。全部自腹でヨロシク!」
 俺の中の永ちゃんが熱くシャウトした。

 8月13日は関根梓の凱旋公演だ。場所は長野県「CLUB JUNK BOX NAGANO」。長野駅近所の「again」という、イトーヨーカドーあたりを思わせる大きなデパートの7階にある。
 6時半開場、7時開演だが、グッズは4時半ごろから売っている。ぼくはここで“キングブレード”を買った。アイドルと縁の薄い読者から「なんだそりゃ?」といわれそうだが、ようするにペンライトやサイリウムが太くなったような棒だと考えていただければ差異はないだろう。ちなみに電池で動く。
 アプガのキンブレは各メンバーのイメージカラー7色に加え、放っておくと一定の間隔でイメージカラーが変化する機能もついている。特定のメンバーが好きな人なら一つの色を選んで点灯すればいいし、箱推し(メンバー全員に等しく愛を注ぐこと)なら7色の移り変わりを思いっきり堪能すればいいのだ。

 ライヴが始まるや否や、メンバーとの距離の近さに驚く。ぼくは下手(しもて)、真ん中よりやや前の隅っこで見ていたのだが、それでも「近ぇなあ」と思った。この臨場感、どきどきする。それだけでぼくは「万難を排して予定を“アプガシフト”に組んで本当に良かった」と感激に包まれた。スクリーンを置くこともないし、衣装替えもない。ただひたすら歌い、踊り、MCをするのみ。その一直線なステージ構成に、ぼくはアプガのゆるぎない実力と自信を感じた。
 演目については誰かが事細かに挙げているだろうから省くが、1曲目でオッといわせ、2曲目でもう、沸点が訪れた。「銀河上々物語」のエンディングで使う(仮)の旗を、続く「イチバンガールズ!」の冒頭でステージ中央に立った古川小夏が猛烈な勢いで振り回す。今回のツアーの名場面が、すでにここで現われた。中盤のMCではもちろん、関根梓がフィーチャーされる。イメージカラーであるオレンジ色のTシャツを着たファンが、彼女のひとことひとことに熱狂する。他のTシャツを着たファンが関根ファンに場所を譲る。関根の姿がよりよく見えるように、という配慮だ。なんて心あたたまる光景なんだ。こういう譲り合い精神が明日のよりよき社会を生むのだ。きくところによるとアプガのライヴは、終わった後にゴミが散らかっていないことでも有名だそうではないか。本番では存分にノリまくり、終演後は礼儀正しくきっちりと。それをできるファンがガッチリついているのは、アプガの強みでもある。アプガの人徳、いや、「グループ徳」といえばいいのか。

 関根梓の名前は、故郷を流れる「梓川」からとられたのだという。そう知ってしまうと、彼女の歌声が川のせせらぎのように聴こえてくる。美しい川、きれいな空(終演後に外に出たら、星をたっぷり見ることができた)、おいしい食べ物。ここで関根梓という才能が育まれたのである。ファンは「長野の誇り おかえりなさい! 関根梓」という大きな横断幕を用意して彼女の凱旋を祝った。[次回8/28(水)更新予定]