本書は東京の医師を中心とした草の根ネットワークが震災後の1年間、福島県・浜通り地区の医療と健康をどう支えたか、という記録である。著者は東京大学医科学研究所特任教授で血液内科医。 著者は編集長を務める、読者が約五万人のメールマガジンで、被災直後から現場の声を配信した。さらに行政・医療・メディア向けのメーリングリストも発足した。ネットワークは現地と支援者をマッチングさせ、世論を高めた。支援の輪は宗教や教育関係者にも広がった。 例えば当時、国が原発からの距離で定めた避難区域を超えた地域でも入院が制限された。医師も看護師もいる。だが脳卒中患者を1時間超かけて他地域へ搬送しなければならなかった。ネットワーク上では何度も現地の様子が訴えられた。地元紙は報じなかったが、東京の記者が記事に書いたことで入院規制は解除された。著者はボランティアを通して「復興には人材育成が必要」と気付く。そして地域の医療崩壊を止めるため、「東北に医学部新設を」と声を上げている。
復興は現場から動き出す
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