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【2024年下半期ランキング 政治・社会編1位】都知事選掲示板に「生後8カ月のわが子」のポスターを貼った男性の“懺悔” 「浅はかでした。今は離婚危機に陥っています」
【2024年下半期ランキング 政治・社会編1位】都知事選掲示板に「生後8カ月のわが子」のポスターを貼った男性の“懺悔” 「浅はかでした。今は離婚危機に陥っています」 男性が「ポスタージャック」した掲示板。画像を一部加工しています。(撮影/板垣聡旨)    2024年も年の瀬に迫った。そこで、AERA dot.上で下半期(7月1日~11月30日)に多く読まれた記事を振り返る。政治・社会編の1位は「都知事選掲示板に「生後8カ月のわが子」のポスターを貼った男性の“懺悔” 「浅はかでした。今は離婚危機に陥っています」」(7月3日配信)だった。(※肩書年齢等は配信時のまま) *   *   *  6月25日、AERA dot.は<都知事選『ポスター枠』を55万円で購入した男性 『生後8カ月のわが子』をポスターに掲載した理由>と題した記事を配信した。東京都知事選で物議をかもしている候補者の「ポスター枠」を実際に買った男性に意図を取材したものだが、記事掲載から2日後、男性から記者に電話があった。その内容は「ポスタージャックはやるべきではなかった」「浅はかだった」という後悔の言葉だった。なぜ男性は考えを改めたのか。何を後悔しているのか。改めて話を聞いた。  7月1日、都内ホテルのカフェで記者と対面した男性は泣きじゃくりながらこう話した。 「勝手に子どもの顔写真を使ってしまったことで、妻には『何てことをしてくれたの!』と泣いて怒られ、その後は口もきいてくれません。子どもは無邪気に過ごしていますが、家庭は崩壊している状態です。今は子どもに作り笑顔で接するのがやっとです」  愛知県在住の50代男性は6月、ある政治団体から東京都知事選候補者の「ポスター枠」を購入。経費含め、約55万円の費用を支払った。生後8カ月の息子の写真を使って「ダメ!一極集中。投票に行こう。東京を住みよい街に」という主張を書き込んだポスターを約900枚作成し、都内36カ所に掲示した。   【こちらも話題】 都知事選「ポスター枠」を55万円で購入した男性 「生後8カ月のわが子」をポスターに掲載した理由 https://dot.asahi.com/articles/-/226151   掲示されていたポスターを剥がす男性(本人提供)   不適切な手段だった  東京都知事選では、特定の政治団体が候補者のポスター掲示枠を事実上「販売」しており、いわゆる“売名”のために掲示板が利用されていることが問題視されていた。そこでAERA dot.では「ポスター枠」を実際に買った男性に接触。どういう目的なのかを取材すると、当時、男性は次のような主張をしていた。 「経済停滞、待機児童や出生率低下など多くの問題が東京一極集中に起因しています。それらを解消し、子どもたちの生活しやすい東京をつくってほしい」 「未来の子どもたちのためにも投票して(暮らしを)改善していこうというのが私の主張ですので、子どもたちの未来のために投票に行ってほしいという気持ちを込めて、わが子の写真を使いました」  だが、記事が掲載された2日後、男性から記者に電話があり、「子どもの写真を掲載したポスターを貼ったことを後悔している」「ポスタージャックなどするべきではなかった」と後悔の念を語った。  男性は掲示したポスターを全て剝がすことを決めたと言い、7月1日はそのために上京していた。そこで同日、都内ホテルで改めて男性に話を聞くと、冒頭のように泣きじゃくりながら後悔を語り出した。 「自己顕示欲とか記念づくりとかそういう考えは、全くありませんでした。より良い都知事選となるために、いい投票となるように、都民の皆さまに自分の主張を聞いていただきたいという思いが強くあったんです。ただ、そのためにポスタージャックに参加するという不適切な手段で伝えようとしたのは、極めて自分勝手な考えで、浅はかだったと思っています」   【こちらも話題】 「税金で設置の公器なのに」全裸写真、売買…苦情電話殺到?都知事選掲示版で選管に「一度もつながらない」 https://dot.asahi.com/articles/-/225997   離婚を切り出されたら諦める  再取材した時点で、都内36カ所に掲示してあったポスターはすべて剝がしたという。そして、こう続けた。 「もし、妻から離婚を言い出されたら諦めようと思っています。しかし、もしこの状態を乗り切れたら、こんな頼りない夫を支えてくれた妻にも、まだ何もわからず遊んでいる息子にも、一生をかけて償っていきたいです」  今回、改めて取材を受けたのは、いまだ「ポスタージャック」に参加している人たちに、自分の後悔を伝えたいという理由もあるという。 「ポスターの内容は公序良俗に反していないにしても、私はポスターを出してしまったことをとても後悔しています。世間の常識から逸脱した行いをして、愛する家族を悲しませてしまった……。だからこそ、(都知事選の掲示板での)ポスターを通しての主張はいま一度、考えるべきだと思っています」  そして、最後にこう語った。 「投票に行っていただき、本当に都知事にふさわしい人を選んでほしいと思っていますし、一人の同じ日本人として、東京の皆さまのよりよい生活を願っているのは本心です。ただ、その手段が間違っており、家族や都民の皆さまにご迷惑をおかけしてしまいました。このたびは誠に申し訳ありませんでした」  取材の最後には、男性の目は泣き腫らして真っ赤になっていた。 (AERA dot.編集部・板垣聡旨)   【こちらも話題】 都知事選「ポスター枠」を55万円で購入した男性 「生後8カ月のわが子」をポスターに掲載した理由 https://dot.asahi.com/articles/-/226151  
都知事選で「選挙がおもちゃにされている」 ポスターや政見放送は時代に即しているのか検討を
都知事選で「選挙がおもちゃにされている」 ポスターや政見放送は時代に即しているのか検討を ポスター枠を実質「販売」したN国の立花孝志党首(前列右)。候補者ではなく、党に「寄付」した人が自由に制作したポスターを貼った    小池百合子氏が3選を果たした都知事選。目立ったのは本来の政策論争ではなく、度を越した悪ふざけや選挙の営利利用とみられる動きだ。AERA 2024年7月22日号より。 *  *  *  特に混乱が相次いだのが選挙ポスターだ。公認と関連候補合わせて24人を擁立した政治団体「NHKから国民を守る党」(N国)は、党に「寄付」をすれば、寄付者が自由に制作したポスターを貼れるとして枠を事実上販売。枠を得た人が選挙とは無関係のポスターを大量に貼り出すケースが相次いだ。これとは別に、ほぼ全裸に近い女性のポスターを掲示し、警視庁から警告を受けた候補も。政見放送ではシャツを脱ぎだす女性候補やジョーカー姿で机の上に座る男性候補も現れた。 選挙制度の想定外  選挙プランナーの大濱崎卓真さんは「選挙がおもちゃにされている」として、こう指摘する。 「過去にも奇抜な候補、特殊な主張をする候補はいましたが、一応は選挙での当選を目指すという建前が成り立っていました。ただ、N国のように露骨にその前提を無視する動きが出てきています。これまでの選挙制度が想定していない事態です」  背景には何があるのか。大濱崎さんは、「情報流通環境の変化」と「政治への視線」という二つの理由を挙げる。 「4月に行われた衆院東京15区補選では、政治団体『つばさの党』による選挙妨害が大きな問題になりました。この例が典型的ですが、選挙で目立つことをして注目を集めれば、動画配信などによって収益化できる構造ができています。さらに、政治不信の高まりで『秩序を守らなくてもいい』という意識が生まれています。政治への最低限の敬意が失われ、政治や選挙をおもちゃにしてもいいと考える人が増えているように感じます」  こうした動きが続くと様々な影響が懸念される。早稲田大学政治経済学術院の日野愛郎教授は言う。 「今回の選挙について言えば、候補者や政策について知るための『認知負荷』が高まりました。本来、選挙戦は候補者の人となりや主義主張、政策を戦わせ、有権者はそれを吟味して投票先を選びます。しかし、営利目的・売名目的の候補や当選する気のない候補が大量に紛れ込み、それが注目を集めることで本来はもっと光が当たるべき候補者選択のための情報に十分な光が当たらなかった。候補者が多く、ポスターや選挙公報を見比べることすら難しくなりました」 過去最多の56人が立候補。選管が用意した48人分のポスター枠では足りず、一部の候補者はクリアファイルで枠外に掲示することに。風雨ではがれるケースもあり、複数の候補が都を提訴した    中長期的にはより深刻な問題が考えられるという。 「選挙は、正統なプロセスによって一定期間民意を負託する先を選ぶ大切なシステムです。しかし、未来の有権者である子どもたちがこの光景を見てどう感じるか。とても、正統で神聖なプロセスには見えないでしょう。そうした感覚を抱かせること自体が民主主義の根幹を揺るがしかねません。対策を練らなければならない時期に来ています」(日野教授) 時代に即しているのか  今年は秋以降、3県(岡山、富山、栃木)の知事選が予定され、来夏には参院選、そして遅くとも来年10月までには衆院選が行われる。  主張の内容にかかわらず、政策を自由に発信できるのは民主主義の、そして選挙制度の大前提だ。また、ポスター掲示板の設置や政見放送などの費用を公費で負担する「選挙公営制度」は、資金力によらず立候補できるよう、そして選挙運動の機会均等のために運用されている。この原則と趣旨は守りつつも、一定の規制を設けることに猶予はないだろう。同時に、都知事選の場合で1万4千カ所に手貼りするポスターやテレビの放送枠を使う政見放送などが時代に即しているのか、検討すべき時にきている。(編集部・川口穣) ※AERA 2024年7月22日号  
都知事選掲示板に「生後8カ月のわが子」のポスターを貼った男性の“懺悔” 「浅はかでした。今は離婚危機に陥っています」
都知事選掲示板に「生後8カ月のわが子」のポスターを貼った男性の“懺悔” 「浅はかでした。今は離婚危機に陥っています」 男性が「ポスタージャック」した掲示板。画像を一部加工しています。(撮影/板垣聡旨)    6月25日、AERA dot.は<都知事選『ポスター枠』を55万円で購入した男性 『生後8カ月のわが子』をポスターに掲載した理由>と題した記事を配信した。東京都知事選で物議をかもしている候補者の「ポスター枠」を実際に買った男性に意図を取材したものだが、記事掲載から2日後、男性から記者に電話があった。その内容は「ポスタージャックはやるべきではなかった」「浅はかだった」という後悔の言葉だった。なぜ男性は考えを改めたのか。何を後悔しているのか。改めて話を聞いた。 *  *  *  7月1日、都内ホテルのカフェで記者と対面した男性は泣きじゃくりながらこう話した。 「勝手に子どもの顔写真を使ってしまったことで、妻には『何てことをしてくれたの!』と泣いて怒られ、その後は口もきいてくれません。子どもは無邪気に過ごしていますが、家庭は崩壊している状態です。今は子どもに作り笑顔で接するのがやっとです」  愛知県在住の50代男性は6月、ある政治団体から東京都知事選候補者の「ポスター枠」を購入。経費含め、約55万円の費用を支払った。生後8カ月の息子の写真を使って「ダメ!一極集中。投票に行こう。東京を住みよい街に」という主張を書き込んだポスターを約900枚作成し、都内36カ所に掲示した。   【こちらも話題】 都知事選「ポスター枠」を55万円で購入した男性 「生後8カ月のわが子」をポスターに掲載した理由 https://dot.asahi.com/articles/-/226151   掲示されていたポスターを剥がす男性(本人提供)   不適切な手段だった  東京都知事選では、特定の政治団体が候補者のポスター掲示枠を事実上「販売」しており、いわゆる“売名”のために掲示板が利用されていることが問題視されていた。そこでAERA dot.では「ポスター枠」を実際に買った男性に接触。どういう目的なのかを取材すると、当時、男性は次のような主張をしていた。 「経済停滞、待機児童や出生率低下など多くの問題が東京一極集中に起因しています。それらを解消し、子どもたちの生活しやすい東京をつくってほしい」 「未来の子どもたちのためにも投票して(暮らしを)改善していこうというのが私の主張ですので、子どもたちの未来のために投票に行ってほしいという気持ちを込めて、わが子の写真を使いました」  だが、記事が掲載された2日後、男性から記者に電話があり、「子どもの写真を掲載したポスターを貼ったことを後悔している」「ポスタージャックなどするべきではなかった」と後悔の念を語った。  男性は掲示したポスターを全て剝がすことを決めたと言い、7月1日はそのために上京していた。そこで同日、都内ホテルで改めて男性に話を聞くと、冒頭のように泣きじゃくりながら後悔を語り出した。 「自己顕示欲とか記念づくりとかそういう考えは、全くありませんでした。より良い都知事選となるために、いい投票となるように、都民の皆さまに自分の主張を聞いていただきたいという思いが強くあったんです。ただ、そのためにポスタージャックに参加するという不適切な手段で伝えようとしたのは、極めて自分勝手な考えで、浅はかだったと思っています」   【こちらも話題】 「税金で設置の公器なのに」全裸写真、売買…苦情電話殺到?都知事選掲示版で選管に「一度もつながらない」 https://dot.asahi.com/articles/-/225997   離婚を切り出されたら諦める  再取材した時点で、都内36カ所に掲示してあったポスターはすべて剝がしたという。そして、こう続けた。 「もし、妻から離婚を言い出されたら諦めようと思っています。しかし、もしこの状態を乗り切れたら、こんな頼りない夫を支えてくれた妻にも、まだ何もわからず遊んでいる息子にも、一生をかけて償っていきたいです」  今回、改めて取材を受けたのは、いまだ「ポスタージャック」に参加している人たちに、自分の後悔を伝えたいという理由もあるという。 「ポスターの内容は公序良俗に反していないにしても、私はポスターを出してしまったことをとても後悔しています。世間の常識から逸脱した行いをして、愛する家族を悲しませてしまった……。だからこそ、(都知事選の掲示板での)ポスターを通しての主張はいま一度、考えるべきだと思っています」  そして、最後にこう語った。 「投票に行っていただき、本当に都知事にふさわしい人を選んでほしいと思っていますし、一人の同じ日本人として、東京の皆さまのよりよい生活を願っているのは本心です。ただ、その手段が間違っており、家族や都民の皆さまにご迷惑をおかけしてしまいました。このたびは誠に申し訳ありませんでした」  取材の最後には、男性の目は泣き腫らして真っ赤になっていた。 (AERA dot.編集部・板垣聡旨)   【こちらも話題】 都知事選「ポスター枠」を55万円で購入した男性 「生後8カ月のわが子」をポスターに掲載した理由 https://dot.asahi.com/articles/-/226151  
都知事選「ポスター枠」を55万円で購入した男性 「生後8カ月のわが子」をポスターに掲載した理由
都知事選「ポスター枠」を55万円で購入した男性 「生後8カ月のわが子」をポスターに掲載した理由 「ポスタージャック」された都知事選の掲示板。画像を一部加工しています(撮影/板垣聡旨)    6月20日に告示された東京都知事選は候補者の「選挙ポスター」が物議をかもしている。ほぼ全裸の写真や風俗店のポスターが貼られ、一部候補者や政治団体が警視庁から警告を受ける事態に発展した。さらに、ある政治団体は候補者を乱立させ、そのポスター枠を事実上「販売」していることも波紋を広げている。“売名”など本来の目的とは異なる形で掲示板が利用されており、対策を求める声も出ている。では、ポスター枠を“買う”側は世間からの批判に何を思うのか。「55万円」でポスター枠を買った男性に取材した。 *  *  * 「掲示板ジャックに参加したのは、都知事選の判断材料として有権者の皆さまに私個人の主張を伝えるためです。マスメディアの情報はどうしても偏りがちですし、(公の場で)一個人の意見が取り上げてもらえる場は限られています。こうして名もない一個人が主張できる機会を得られたので、私はお金を払ってポスターを出したのです」  こう語るのは、愛知県に住む50代の男性。候補者を擁立する政治団体に“経費”を払い、自身が作成したポスターを都内36カ所に掲示した。ポスターには、赤ちゃんが怒っている様子が写っており、「ダメ!一極集中。投票に行こう。東京を住みよい街に」というフレーズが記載されている。 「これは私の生後8カ月になる息子です。未来の子どもたちのためにも投票して(暮らしを)改善していこうというのが私の主張ですので、子どもたちの未来のために投票に行ってほしいという気持ちを込めて、わが子の写真を使いました」 ポスターに掲載されているQRコードを読み取るとこのLINEアカウントに誘導される   自らは立候補はしない理由  だが、道理としては、自らが都知事選に立候補して堂々と有権者に政策を訴えればいいはずだが、男性はなぜそれをしないのか。 「私が立候補すればいい、考える人はそういないのではと思います。人には能力がありますし、分相応ということもあります。私は緊張しやすいですし、人前でうまく喋れるタイプではありません。都民だったとしても立候補など全く考えられません」  では、実子の写真を使ってまで男性が有権者に知ってほしいという主張は何か。 「経済停滞、待機児童や出生率低下など多くの問題が東京一極集中に起因しています。それらを解消し、子どもたちの生活しやすい東京をつくってほしい。電車では通勤ラッシュで押しつぶされても我慢して、車でも渋滞していて時間に間に合わずイライラが募ります。高いビルや地面のアスファルトなど、街全体がコンクリートに囲まれていて熱がこもっています。車もエアコンも熱を放出し続けています。また、災害被害も人が多くなるほど甚大になり、大災害で救急車が出払ったら、人の命は救えません。大勢の人が混乱した状態では逃げ場もふさがれるでしょう。地価高騰で都心の新築マンションは1億円以上出さないと買えなくなっています。家賃も高く、ウナギの寝床みたいなところに住めば、閉塞(へいそく)感や圧迫感のある生活になってしまいます。これらを改善するには、東京一極集中を解消するしかありません」 都庁内にある選挙管理委員会事務局(撮影/板垣聡旨)   都の選管は「前代未聞の事例」  男性がポスターを掲示するためにかかった費用は55万4040円。内訳は、①ポスターを1カ所貼るのに1万円の寄付(=36カ所のため、計36万円)、②貼り出しの作業代が税込みで1カ所3300円(=36カ所のため、計11万8800円)、③ポスター900枚の印刷代に7万5240円、だった。男性は「今後はポスタージャックはできなくなるかもしれない。1回だけのチャンスと考え、今回はできる限りの出費をしました」と話した。  都選管によると、6月21日(告示日の翌日)までに、選挙ポスターについての苦情が1200件以上寄せられたという。選挙ポスターの意義を問うものが多く、全裸写真ポスターなどについては「ポスターをはがせ」などの意見もあったという。都の関係者は「今も選管は電話が鳴りやまない。他部署から選管に電話してもつながらないことがある」と打ち明ける。  男性が加担した“ポスタージャック”についても苦情はあるのか。担当者は、「前代未聞の事例です」と述べたうえで、「公職選挙法違反があれば、警察が対応します」とだけ答えた。苦情件数については「まだ集計が出ていないのでわからない」とのことだった。  一部のポスターが警視庁から警告を受けていることについて、男性は「公序良俗に反しない、誹謗(ひぼう)中傷をしない、事実と異なることを示さないなどのルールは守られるべきだ」とした上でこう答えた。 「ポスター枠は候補者に使用の権利が与えられている以上は、ルールの範囲内であれば候補者の自由に使わせてあげればいいのでは。候補者が自らの意思で使わない自由も尊重するべきかと思います」  都知事選の選挙ポスターをめぐっては、よく「表現の自由」「選挙活動の自由」がうたわれるが、それが本当の意味で「自由」を守ることにつながるのか、われわれはよく考えるべきだろう。 (AERA dot.編集部・板垣聡旨)
「税金で設置の公器なのに」全裸写真、売買…苦情電話殺到?都知事選掲示版で選管に「一度もつながらない」
「税金で設置の公器なのに」全裸写真、売買…苦情電話殺到?都知事選掲示版で選管に「一度もつながらない」 候補者ではない女性たちのポスターが半数を占めた掲示板  東京都知事選は過去最高の56人が乱立する事態になった。候補者のポスターを貼る掲示板には48人分の枠しかなく、どこの掲示板も8人分の枠が足りない状態だ。政治団体「NHKから国民を守る党(N国)」が24人もの候補者を立てたことが大きな原因で、枠が足りなくなったことに加えて、その枠の利用権を売買する動きもあり、都の選挙管理委員会には苦情の電話が殺到する。地方政治や選挙に詳しい法政大学大学院の白鳥浩教授に掲示板をめぐる問題のポイントを聞いた。       告示翌日の21日、記者は都選挙管理委員会に何度も取材の電話を入れたが、とうとう一度もつながらなかった。都知事選のポスターに関する疑問や苦情が殺到しているのだという。  候補者にはそれぞれ、掲示板における枠に該当する番号が割り振られる。候補者は自分に与えられた番号の枠にポスターを張ることになる。番号は午前8時半までの受付した立候補希望者のくじ引きと、それ以降に訪れた希望者の先着順で決まった。49以降の番号になった候補者には、都内1万4000カ所にのぼるいずれの掲示板でも、48ある正規の枠は使えない。代わりに都選管が用意したのは、クリアファイル、雨よけ用の袋などだった。掲示板の左右の枠外や上部に各候補者自身が、選挙ポスターの入ったクリアファイルを、ホチキス、画びょうなどで固定するのだという。  白鳥教授「この時点で、48番までの人と49番以降の人で、選挙の条件に差ができてしまった。49番以降の人の条件が悪い。公平な選挙とは言えない」  都選管の責任者は「49番目以降の候補には手間をかけてしまうが、許容範囲の対応だと判断した」と説明する。   白鳥教授「雨が降ったら、掲示板の端に止めたクリアファイルには雨が溜まるかもしれない。風が吹いたら、ファイルが揺れて見えにくいですよね」「クリアファイル組になって落選した人が『不公平だった』と、選挙無効の訴えを起こす可能性もあると思う」  事前にわかっていたこと  立候補者が50人以上にのぼりそうなことは、事前に分かっていた。N国の立花孝志党首は、2カ月余り前の4月11日に都庁で記者会見し、多数の候補者を立てる方針を示していた。しかし都は掲示板の枠を50以上に増やす方策を取らなかった。  白鳥教授「都選管の選挙行政に対する認識が甘かったと言わざるを得ない。例えば掲示板内に横の列をもう1列増やせば、何となくクリアできたような気がする」 掲示板の下部に止められた候補者のポスター  ベニヤの掲示板の増設には億単位の費用がかかってしまうという。クリアファイルならもっと安くで済む。  白鳥教授「その金額は民主主義のコスト。安いからいい、高いとだめ、という話ではない。同じ条件で選挙を行うことが何より大切で、やっぱり、都選管の落ち度なんじゃないかと思う」   掲示板について、もうひとつの問題は、ポスターを貼張るための枠が売買の対象となったことだ。立花党首は4月の会見で、N国に寄付してくれれば、ポスターを貼る枠を譲る旨を表明した。告示後、実際に複数の掲示板で、N国が獲得した掲示枠に選挙とは関係のないポスターが無数に貼られている。掲示場1カ所あたり、1万円で権利を売買すると仮定すると、すべてに掲示場の権利が売れれば1億4000万円以上の収益になる。候補者1人あたりの供託金は300万円なので、N国が立てた24人分計7200万円を上回り、利益が出ることになる。  白鳥教授「選挙ポスター掲示板というのは、税金で設置されている公器と言ってもいいと思う。候補者はその公器の使用許可を得ているだけで、所有物ではない。それを売買するというのはかなりの問題だと思う」   掲示板の枠の売買については、多くの人が疑問を持ち、都選管にも問い合わせが寄せられている。しかし公職選挙法はこうした行為を想定しておらず、禁止する規定もないという。   白鳥教授「法改正には時間がかかる。改正を待っている間に他の選挙で模倣犯が出てくる可能性もある。改正しなくとも、ポスター掲示板という公器を使って特定の個人や私的な企業が宣伝に使ったり、金銭的利益を得たりするということは望ましくないと、運営の上で決めればよかったと思う。総務省の省令でも政令でもいいので、ルールを明示する通達を出しておけばよかったのではないか」    QRコードをたどると…  ポスター掲示板の使い方にも問題がありそうだ。場所代として売買されたと思われるポスター枠には、都知事選に関係がなく、候補者とは異なる人の写真などがズラリと並ぶ。ポスターにQRコードがついていて、 出会い系サイトや求人情報に飛ぶようなものも見られる。 ポスターの隅についているQRコード  白鳥教授「ポスターのコンテンツも問題。候補者の政治的な情報、例えば顔、スローガン、政策みたいなものを有権者に訴えるのが掲示板の本旨。目的外のポスターの掲示というのは、本旨からすれば認められないことになると思う」   レースクイーンなどで活躍するモデルの女性と思われるほぼ全裸姿のポスターが掲示された。警視庁は都迷惑防止条例に違反するとして警告。作成した候補者はポスターをはがした。  白鳥教授「これが候補者自身だったら、自己表現だという議論もあり得るのかもしれないが、この女性は立候補もしていないようですね。映画作品では猥褻か芸術かという議論があったが今回のはそういうことではない」   選挙が本来の目的から外れて、ビジネスに利用される例が他にもあった。今年4月の衆院東京15区補選がそれだ。つばさの党が他候補の演説を妨害するなどして公選法違反容疑で代表者らが逮捕された。警視庁は同党が過激な動画配信で広告収入を得ていたとみている。  白鳥教授「選挙をビジネスにできないようにする何らかの方策を考えていく必要がある。そうしないと、同じことがこれからも繰り返される」 

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