(撮影/写真部・東川哲也)
(撮影/写真部・東川哲也)

 早稲田、慶応、明治といった、明治期からの伝統を受け継ぐ有名私大。その勢力図はいま、どうなっているのか。過去3年間の入試で、異なる二つの私大に合格した受験生が、最終的にどちらの大学に入学したか、つまり受験生の「本命度」を調査した。

 本命度対決の頂点に君臨するのは、やはり慶應とそのライバル、早稲田。早慶いずれかとその他の大学を併願して合格した場合、95%以上の受験生が早慶を選ぶという圧倒的なブランドだ。では早慶にダブル合格したら、慶應と早稲田のどちらに入学するのか。

「だいたい8対2で慶應ですね。かつては五分五分、あるいは早稲田有利でしたが、1990年代中頃から、潮目が変わったように感じます」

 と言うのは、調査を行った大手予備校「代々木ゼミナール」入試情報センターの坂口幸世(ゆきとし)・統括本部長。当時、SFC(湘南藤沢キャンパス)創設、AO入試開始など話題に事欠かなかった慶應は「大学改革の旗手」。逆に、早稲田は規模が大きい分、「旧態依然たるマスプロ大学」というネガティブなイメージを持たれがちだったという。その後は、早稲田も学部創設、再編や少人数教育などに乗り出したが、「2対8」の構図は変わっていない。

 かつての人気を知る40代以上の早稲田OB・OGにこの数字を見せると、こんな反応が返ってきた。

「慶應に負けるなんてあり得ない。それって、マスコミが勝手に作ってるイメージじゃないですか! ああ、でもマスコミに多いのは、ウチの大学出身者ですよね…」(第一文学部出身の40代主婦)
「悔しいけれど、最近は慶應のほうがイメージがいいのかも。自分は早稲田出身ということにプライドがありますが、娘には慶應の付属を受験させるかも…」(政治経済学部出身の40代会社員男性)

 ただ、この数字だけを見て、「両校には埋めがたい差が広がった」と思うのは早慶、もとい早計だ。坂口さんは早慶を両方受ける受験生には、「もともと慶應が第1志望」という層が多いと指摘する。

「慶應は、文系でも入試科目に数学があったり、多くの学部で小論文を課されたりするなど、一般的な私大3教科型とは異なる独自の対策が必要です。早稲田第1志望の受験生にとって慶應は、負担が大きいわりに受かりにくい、つまり『受けにくい併願先』なんです」

AERA 2013年2月25日号