例示されたのは、①選挙期間中や近接する期間で、特定の候補者や候補予定者のみを相当の期間にわたり取り上げる特別番組を放送した場合のように、選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合、② 国論を二分するような政治課題について、一方の政治的見解を取り上げず、他の政治的見解のみを取り上げて、それを支持する内容を相当の期間にわたり繰り返す番組を放送した場合のように、当該放送事業者の番組編集が不偏不党の立場から明らかに逸脱していると認められる場合、の2点。

 1点目で選挙報道に言及していることから、今回の要請にこの統一見解が盛り込まれるのでは、と懸念された。

●萎縮するか、選挙報道

 前回14年暮れの総選挙では、公示日直前に自民党がNHKと在京テレビ5社に「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」との文書を示した。この文書の効果かどうかは定かではないが、各種調査によって、ワイドショーも含めた選挙報道量が激減した。

 この文書要請のきっかけは「NEWS23」でアベノミクスに批判的な街頭インタビューを紹介したことに対して、生出演していた安倍首相が感情的になり批判したことであった。この影響か、街頭インタビューの紹介も減った。

 このような政府・与党の動きから参院選報道は注目を集めている。18歳選挙権、鳥取・島根と高知・徳島の合区、アベノミクスの評価、消費税率アップの見送り、憲法改正、安全保障関連法の是非、一人区での野党統一候補 vs.与党候補の争いなど、さまざまな論点を有権者である国民に、テレビはどのように正確な情報を提供してくれるのか。

 よく言われることだが、放送法第4条の番組編集準則には、政治的公平とともに、論点の多角的提示があげられている。テレビが政権を向いているのか、国民を向いているのかも問われる選挙報道なのだ。

 すでに政党CMに関しては、オバマ大統領の広島訪問を使う自民党と電通が組んだCMに、各局の考査が政党CMの趣旨に合わないとの改稿要請を求める事態も起こっていると聞く。放送されるCMがどうなるのかにも注目だ。G

●すなかわ・ひろよし 立教大学社会学部教授。4月に『安倍官邸とテレビ』(集英社新書)を上梓。今回の高市発言も含め、政権からテレビへの異常な出来事が蔓延する昨今、ぜひ、ご一読を。