書評『オードリー・タン 自由への手紙』クーリエ・ジャポン編集チーム編 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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オードリー・タン 自由への手紙 クーリエ・ジャポン編集チーム編

長薗安浩著書評#ベスト・レコメンド#読書

オードリー・タン 自由への手紙

オードリー・タン,クーリエ・ジャポン編集チーム

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自由になる

 初めてオードリー・タンを知ったのは昨春、コロナ禍が本格化する日本で、多くの国民がマスク不足に苦労している頃。台湾では、誰でも国民健康保険証を使って週に1度、1人2枚のマスクを購入できるとのテレビ報道にふれたときだ。この対策の導入者として紹介されたのが、台湾のデジタル担当大臣を務める彼女だった。

 1981年、台北市に生まれたタンは、小学校に入学してまもなく9元連立1次方程式を解き、天才と目された。IQは測定可能な最高値160。8歳から独学でプログラミングを学び、14歳で中学校を自主退学。15歳でプログラマーとして仕事をはじめ、19歳にしてシリコンバレーで起業。24歳のとき、トランスジェンダーであることを公表し、女性へと移行する「第二の思春期」を迎える。33歳で会社を売却し、ビジネス界から引退。史上最年少の35歳で蔡英文内閣に入閣、現職に就いた。

 こうしてプロフィールを記すだけでも、タンが破格の人だとよくわかる。彼女へのインタビュー集であるこの本は、格差、ジェンダー、デフォルト、仕事に関する諸々の壁(全部で17項目)からいかに自由になるか説いているのだが、それらの内容に説得力があるのは、彼女が自身の人生ですでに実践してきているからだろう。

 自由とは、自分がどんな人であるかを表現することと明言するタン。彼女は、今、自分が楽しむためと公共の利益のためだけに働いている。幼くして「天才」と評された人物が成長し、その能力を社会のために発揮する奇跡的な現実が、台湾にはあるのだ。日本にもそんな幸福が訪れることを願いつつ、私は彼女からの手紙を読み返している。

週刊朝日  2021年3月5日号


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