海外からの宿泊客の間でも、外資系のラグジュアリーホテルに引けを取らない高評価を浴びつづけている帝国ホテル、オークラ、ニューオータニの「ホテル御三家」。遠く明治時代から始まるその歴史をひもといてみれば、三者が思いもかけぬ入り組んだ因縁を背景に、単なるライバルであることを超えて互いをもり立て、日本のホテル業界を牽引してきた道筋が見えてくる。

 伝統を重んじつつも常に自己研鑽を怠らず、新しいチャレンジを繰り返しながら、幾多の困難を乗り越えてきた三つのホテル。観光業界にとって大きな痛手となるコロナ禍のさなかだからこそ、この三者の積んできた努力や創意工夫の足跡を辿る意義がある。数々のトリビアにも事欠かないこの本で、世界を唸らせる日本ならではの「おもてなし」の神髄に触れたい。(平山瑞穂)

週刊朝日  2020年7月31日号