小さな総合出版社を目指す社長が、出版不況ならぬ「出版不狂」をいかに乗り切るか、その脱出口を模索して七転八倒する日々を記録した。著者は出版社勤務を経て2006年に単身、ミシマ社を設立。現在は東京・自由が丘と京都市の2拠点で活動する。

 本書では15年から約5年間、一冊読み切る感覚の100ページ前後の本や、最初から最後まで読み切りたくなる雑誌「ちゃぶ台」をつくったり、少部数レーベルをたちあげたりする中で、考えたことや発見したこと、工夫したことが綴られる。

 出版と書店の関係とは、経営とは何かなど、根源的な問いが何度も発せられる。そもそも紙とはいかなるものか、製紙工場や和紙の里にも出かけ、パルプに思いをはせる。出版にかける著者の、ほとばしるエネルギーが伝わる一冊だ。(村上玄一)

週刊朝日  2020年6月19日号