ドラマ化もされた同名漫画「孤独のグルメ」のエッセンスを取り入れた小説。輸入雑貨商を営む主人公の中年男、井之頭五郎の視点で、漫画版とは異なる18話の物語が展開される。仕事の合間を縫っての「美味しいもの探し」に余念がない。彼の食への飽くなき探究心が物語の魅力だ。

 都内の風景を切り取ったモノクロ写真とともに、各話ごとに付けられたタイトルが秀逸だ。第13回「月曜夜にスマホは水没。水曜日おでんに救われる」。第14回「浅草の片隅でロシア料理の強靭な連続技に熱く火照る」。哀愁漂うタイトルに、彼の生々しく物悲しい生活が連想される。

 閉店した蕎麦屋の貼り紙を見た瞬間、彼の脳裏にとある思い出が蘇る。職人気質で無愛想だが、そっと天ぷらをサービスしてくれた店主の姿が温かかった。(二宮郁)

週刊朝日  2019年11月15日号