整理回収機構。バブル期の日本中の債権を回収したこの組織が存続していると本書で知り、驚いた。経済史では決して大文字で記されることがなかった、組織の「後列」で生きる人々に光をあてた一冊だ。

 50代、60代には、なつかしい名前が並ぶ。「ナニワの借金王」と呼ばれた末野謙一、「京都の怪商」西山正彦。今でも億単位で増える借金を気にもとめない「バブルの怪人」たちに市井のサラリーマンがどのように立ち向かうか。職業人としての矜持の持ち方を読み手に投げかける。

 債権回収に奔走した者の多くはサラリーマンとしては「ババを引いた」のかもしれない。だが、時代に翻弄されながらも、逃げずに、必死に負の遺産と向き合った。「平成」を戦い続けた彼らから、今、学ぶことは大きい。(栗下直也)

週刊朝日  2019年6月21日号