「翻訳で軍事物」と聞けば敬遠したくなる人もいるだろうが、読み出したら止まらなくなる一冊だ。400ページを超える厚さを全く感じないだろう。

 2009年10月3日。アフガニスタン東部、パキスタンとの国境付近に位置する米軍の前哨基地が、早朝にタリバンの戦闘員に襲撃を受けた。撤退を想定していた基地だけに守備は脆弱。取り囲む高地から米兵の6倍に相当する300人以上のタリバンが陣地内に侵入し包囲される。四面楚歌の状況下での14時間の攻防は、陳腐な表現だが手に汗を握る。

 著者は現場を指揮した米軍の二等軍曹。秒単位で状況が変わる戦場の描写も緻密で緊迫感が凄い。出てくる面々も個性的。バカみたいな会話を交わした仲間が突然いなくなる戦場の悲惨さも浮かび上がらせている。

週刊朝日  2017年12月8日号