のらりくらりと質問をかわす菅官房長官を記者会見でやりこめ、一躍注目を浴びる存在になった東京新聞の望月衣塑子記者。『新聞記者』は彼女が自身の記者生活を忌憚なくつづった一冊だ。

 中学生のときに読んだ本の著者、フォトジャーナリスト・吉田ルイ子に憧れて新聞記者を志し、慶応大学卒業後は大手新聞社やテレビ局を受けるも軒並み不採用。やっと入れたのはブロック紙の東京新聞だった。初任地の千葉で事件取材の楽しさを知った彼女は、意外にも〈政治に関しては正直、疎い状態〉だったという。

 そんな彼女を変えた契機のひとつは2014年、「武器輸出三原則」から名前を変えた「防衛装備移転三原則」の一件を経済部の記者として取材したことだった。

 17年4月から、政治部を中心とする森友・加計学園問題の取材チームに社会部からひとりだけ参加。6月6日、官房長官の定例会見に様子見くらいのつもりで出席した望月は、あっけなく終わりそうな雰囲気の中、思わず手を挙げて質問した。「東京新聞、望月です」「杉田副長官は通常、前川事務次官級の方々の身辺調査や行動確認をしている、ということなのでしょうか」。前川氏の「出会い系バー通い」に関する内容だった。8日には23回も質問、通常5分程度で終わる会見は37分に及んだ。

 この会見が話題になり〈意志とは無関係に私は出すぎる杭になってしまった〉。〈私は「空気を読まない」とよくいわれるが、そのとおりだと思うし、むしろ読もうとしていない〉と自己分析する望月だが、本書から浮かび上がるのは、奇をてらっているのでも何でもない、しごく真っ当な記者の姿だ。〈だれも聞かないのなら、私が聞くしかないとも思っている〉〈見えざる敵に怯え、目の前にある問題を見て見ぬふりをすれば、相手の思うつぼだ〉。そうだよね!

 かつては本多勝一のようなスター記者に憧れて新聞記者を目指す中高校生がいた。本書を読んで記者を志す中高校生がいるんじゃないかな。だからこそ効く、単刀直入なこの書名。快著である。

週刊朝日  2017年11月17日号