近代の作家60人程度の異性関係を記している。教科書で親しんだ「文豪」の下半身のだらしなさを浮き彫りにする。

 島崎藤村は姪を妊娠させ、海外に高飛びし、芥川龍之介は関係を持った女性にまとわりつかれ精神を病んでいく。倉田百三は10代の少女と文通し、陰毛を送れと迫る。もちろん、こうした異性体験は作家の血となり肉となり、文学に昇華するのだが、結婚後に妻以外と関係がない作家は夏目漱石などごくわずかであることは現代からすると驚きだろう。

 著者は「作家評伝のプロ」であり、1人当たり数ページと紙幅が限られる中でも通説の誤りの指摘も含め、内容が濃い。彼らが生きた時代と現代とは異なるが、「ゲス不倫」報道が気になるワイドショー好きな方々にはこんな時代があったことも知って欲しい。

週刊朝日  2017年11月3日号