書評『私の日本地図2 上高地付近』宮本常一著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
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《話題の新刊 (週刊朝日)》

私の日本地図2 上高地付近 宮本常一著

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松岡瑛理書評#話題の新刊

 日本全国を行脚した民俗学者が、生前刊行した著作集のリニューアル版。昭和40年、信州・上高地付近の地域を歩いた際の記録12編が収められる。土地の多くは、谷奥に潜むいわゆる「僻地」。古道を歩けば「実に平凡なさびしいところ」(「桧峠」)、「全く忘れられた世界」(「鎌倉往還」)と、描写には物悲しさが漂う。宮本はこうした厳しい環境に人々が住み着き、くらしを営む過程に目を向けた。例えば番所はまず養蚕・林業が地域の収入を支え、のち、スキー客・学生向けの民宿業が発展した。何もなかった場所に、自身の手で「経済」を生み出していく。その創意工夫の姿勢は、与えられた仕事に従事することの多い現代人にとって参考になる。
 宿の主人に土地の歴史を何時間でも訊ねたという宮本の熱量が時代を超え届く。

週刊朝日 2016年12月9日号


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