10代で非行に走った者の全てが暴力団に加入するわけではない。個人の資質なのか、環境なのか。元暴力団員への取材を通じて、家庭や学校、仲間、地域社会との関わりから原因を探る。
 インタビューは組員たちが他者からの評価や地位を強く求め、ヤクザ社会に入った背景を浮き彫りにする。親とのつながりの密度が薄く、幼少時に家庭で教育の機会が与えられなかったことが、一般社会では評価を得られない下地をつくりあげると指摘する。
 興味深いのは、著者自身が、やんちゃな思春期を過ごし、23歳で働きながら高校に進学、大学院修了の経歴を持つ点。なぜ、自分は踏みとどまり犯罪社会学者になり、彼らはあちら側に行ったのか。その自覚は、組脱退後の社会復帰など「出口」の問題にも、冷静ながら温かいまなざしを向ける。

週刊朝日 2016年9月9日号