「食」には人間の核心が見える──という発想の下、著名人29人に行われたインタビュー集。毎日何を食べ、どんな生活を送っているのか。あくまで具体的な一つひとつのエピソードから、当人の人生や職業が色濃く立ち上る。
 食と肉体が密接に結び付くのがアスリートだ。74歳のときでも、週1度は山を登ったという登山家・田部井淳子は登頂時、ごはんや味噌汁など慣れたものを食べる。山では「食べる人は動ける人」。大勢に囲まれて過ごすタレントはどうか。光浦靖子は「もやしだらけの食事」だった過去を経て、金銭に余裕の生まれた現在までの変遷を語る。飲み歩きの日々かと思いきや、テレビの仕事は「どろどろに疲れる」と、自宅で一人の食事を好む。些細な話にも人の状況や願望が映し出されており、思わずわが身を振り返る。

週刊朝日 2016年5月27日号