養老孟司が選ぶ「生き物を愉しむ本」ベスト5

番外編

2014/08/08 19:19

『昆虫記』はこれまで何度か翻訳されてきた。今は奥本大三郎の完訳が手に入る。注も至れり尽くせり。出てくる虫の正体がよくわからない、なんてことはまったくない。虫なんか、なんの関心もなかった、この本が初めてという人でも十分に読める。ルビまで振ってありますよ。
 そのうえ、どこから読んでもいい。はじめからきちんと筋を追う、というような本ではない。自然を観察し記述する。それを学ぶテキストとして最良である。現代人はこういうことをしなさ過ぎる。私はそう思う。なにかというとすぐに実験室に籠もる。挙句の果てにSTAP細胞の論文不正問題である。
 現代の日本の書物では、『博物学の時間』を挙げたい。著者はダニの専門家だったが、定年後は学生のころから興味の対象だったホソカタムシを調べている。生き物に関心を持って調べる作業がどういうものか、わかっていただければいい。なにがわかるのかって、要するに楽しいのである。
 現代日本人の大半は都会人で、基本的には自然に触れない人たちである。人間の相手ばかりしていると、せっかくの人生がすぐに潰れてしまいますよ。
 自然に触れろと言われても、仕事があるからなあ。そう思う人に『アゲハ蝶の白地図』を薦めたい。著者は故人だが、建設会社に勤務しながら、蝶に関する優れた業績を上げた人である。なにしろインドネシアで乗っていた飛行機が着陸寸前に墜落し、炎上しているところを背にした本人の写真が載っていますわ。スゴイ人がいますよ、本当に。内容もその写真から想像がつくのではなかろうか。
『生物学者』は愉快な本が読みたい人にお薦め。著者は若い人が自分の真似なんかしたら、生物学者にはなれないと書いている。もちろんそんなものになる必要なんかない。
 5冊目は『世界のクワガタムシ大図鑑』。図鑑の一つくらいは見てくださいね。

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