鳥たちはいったいどこを飛んでいるのか、魚やペンギンはどんな速さで、どこまで深く潜るのか。動物の体に、位置や照度、深度などを測る記録計を取りつけるバイオロギングとよばれる手法で研究を進める生物学者が、これまで謎に包まれていた彼らの行動パターンや身体メカニズムをユーモラスに語る。
 データからわかるのは、人間は動物のことをまるでわかっちゃいなかったということ。ウェッデルアザラシは連続1時間も潜り続け、アホウドリはたった46日で地球を1周する。マンボウの泳ぎはなぜかペンギンと同じ加速パターン。90度くるりと倒せば納得、あの奇妙な上下対称の背びれ尻びれはペンギンの両翼そのまんま。彼らは同じ仕組みで泳いでいたのだ。想像をはるかに超えるダイナミックな行動領域・身体能力も驚きだが、なぜその形なのか、その動きなのか。進化的意義まで明快に解き明かして、興奮が止まらない。
 生物学者はどういうわけか人を楽しませるのがうまい人が多い。物理で解明する生物学の最前線を、わははと笑いながら知ることができるこんな本はめったにない。

週刊朝日 2014年7月18日号