書評『ヴァティカンの正体 究極のグローバル・メディア』岩渕潤子著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《新書の小径 (週刊朝日)》

ヴァティカンの正体 究極のグローバル・メディア 岩渕潤子著

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青木るえか書評#新書の小径

バチカンのネット戦略

「ヴァティカンの正体」と言われると、何かおどろおどろしい秘密が隠されているような気がしませんか。秘密結社と組んで世界を支配しようとしているとか。そういう本ではありません。情報戦略を軸にしたバチカン市国の現実。バチカンの金融機関における巨大マネーロンダリングとか、教皇がマフィアにメスを入れようとしたらいきなり死んだとか、そういうことも紹介されてはいるが、しかし陰謀がなくてもバチカンてところは、興味深いところだなあと思わされる。
 あんなに小さい国なわけだ。人口も少ない。大宗教の本拠地があること一つで持っている。そしてその転がし方について考えてみると、「やり方がすごくうまい」。仏教の聖地でもイスラムのメッカでも、こうはうまく転がしてはいないだろう、ということがこの本を読むとあらためてわかる。
 たとえば聖書。日本の地方都市のビジネスホテルの枕元にも置いてあったりする。それほどキリスト教信者がいない日本ですらこれなら、いったい全世界でどれだけ売れてんだ。バチカンは、ネットをじつにうまいこと使って、世界に向けて商売をしている。聖書マンガのiPhoneアプリ(各国語版)とか! それもアプリそのものは無料でダウンロードでき、本編はアドオン(ソフトの追加機能みたいなもの。たぶん聖書なら、いいとこまで載ってて「続きはお代を払ってからのお楽しみ」みたいになってる)を買わせ儲ける仕組みとか。
 般若心経でそういうことをやってるのかもしれませんが、きっとこんなふうにうまく回してはいないだろう。そう、翻って我が国ももっとうまいこと、日本の文化を使ってバチカンみたいにやれないか、という提言もあって、あくまでも地に足のついた本なのだ。
 途中で「アップル三位一体説」「ジョブズとヴァティカン」てのが出てきて、神様の概念を今風に解説したところはぎょっとしたけど、なかなか面白かったです。

週刊朝日 2014年4月4日号


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