光溢れる街中で星が見えるはずがない、と思う人は多いだろう。いや、忙しい日々に追われ星の存在すら忘れているかもしれない。そんな人にお勧めなのが本書だ。
 六本木、銀座、大阪・道頓堀。都会の真ん中で煌めくネオンと共に星々がくっきり光跡を描く。銀座4丁目交差点では和光ビル時計塔を中心に北天の星が回り、お台場では冬の大三角がビル群を見下ろす。圧巻は表紙に使われた東京タワーの写真だ。約12時間の露出によって同心円状に広がる星の軌跡を背景に、屹立する東京のアイコン。めまぐるしい時を生きる人間を悠久の時を刻む星が静かに見守るようで、温かな気持ちになる。
 撮影したのは朝日新聞記者。小学生の頃から天体写真を撮影し、小惑星探査機「はやぶさ」帰還の写真で2010年東京写真記者協会賞特別賞を受賞。数秒~数十秒の露出で連続撮影した数千枚の画像を「比較明」という手法で合成する第一人者だ。星占いで人気のライターが短文を添える。宇宙は常にそこにある。見なれた景色が違って見える。

週刊朝日 2013年1月18日号