入国後滞在した政府指定の宿泊施設では、弁当がドアノブにかけられていた
入国後滞在した政府指定の宿泊施設では、弁当がドアノブにかけられていた

 筆者の滞在した場所は両国にあるアパホテルであったが、こうした政府に指定されたホテルが都内や横浜などに数カ所あるという。ホテルの各階には24時間警備員が配置され、洗濯する際や緊急時以外には各自の部屋から一歩も出ることは許されない(洗濯をする際にもスタッフが同行しなければならない)。

 食事は1日3回。朝食は7時半、昼食は12時、夕食は夕方6時ごろに提供される。筆者が驚いたのはその提供の方法だ。時間になると弁当と飲み物が入ったビニール袋が、各部屋のドアノブにひっかけられていた。場内アナウンスがあるまで手を付けてはいけなく、弁当の入った袋を取る際にはマスクを着用するように指示が出る。ホテルで働くスタッフなど、他人との接触を完全に断つためだ。筆者が滞在した部屋は高層階であったため窓が開けられず、3日間全く外の空気に触れることもできず、この期間が精神的に最もきつく感じられた。

宿泊施設では1日3食の弁当が無料で提供されたが、隔離中に部屋からは一歩も出れなかった
宿泊施設では1日3食の弁当が無料で提供されたが、隔離中に部屋からは一歩も出れなかった

 さらに毎朝、ホテルから配られた体温計で体温を測り、咳や嘔吐、食欲の有無などの健康状態を、オンライン上でホテルと政府に報告しなければならない。また、スマホにインストールした「Overseas Entrants Locator(OEL)」と呼ばれる位置情報アプリから、1日の間に1~2回ほど送られてくる通知に応じて、現在位置の報告をする必要がある。

 ようやく3回目の朝を迎えると、唾液採取による新型コロナの再検査が行われ、陰性が確認された者だけがホテルからチェックアウトが出来る。筆者の場合、午前8時頃に唾液採取が行われ、ホテルから開放されたのは夕方の4時頃。そこから、また専用のバスに乗せられて、羽田空港まで連れ戻される。

 戻りのバスの中には、同じ飛行機に乗っていた乗客もいて、同じ苦労をともにした仲間意識のような感覚が芽生えていた。その中のひとり、日本在住20年以上になるという中国人の女性はアメリカにいる息子を3週間ほど訪れて戻って来たとのことだ。アメリカ滞在中に1回の接種で済むジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンを受けた彼女は、このような政府による3日間だけの強制隔離に、どれほどの意味があるのかと疑問を口にしていた。さらに、これらの滞在費や食費などはすべて政府持ちであるが、いったいどのぐらいの税金が使われているのだろうかと周りの人からは声が聞かれた。

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