木村伊兵衛が出合い頭で撮った「大阪商人の姿」 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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木村伊兵衛が出合い頭で撮った「大阪商人の姿」

連載26 木村伊兵衛の「傑作が生まれる瞬間」

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田沼武能dot.#アサヒカメラ
道修町(1957〈昭和32〉年7月)

道修町(1957〈昭和32〉年7月)

 昭和32年7月21日から24日まで木村伊兵衛は、大阪の日本人というテーマで撮影に出かけている。それは大阪人=大阪商人を撮ることであり、その特色を出そうと薬の問屋街の道修町や丼池筋にある繊維問屋街、通天閣や新世界、道頓堀、心斎橋、戎橋界隈などを精力的に撮り歩いている。また、ファッションショーや天神祭、その境内に出ていた「覗きカラクリ」までとらえている。そのとき撮った写真は天神祭の境内で撮った「覗きカラクリ」やステテコ姿で露店を開く男性など、数点がちくま文庫のシリーズや『定本木村伊兵衛』(朝日新聞社刊)などに収録されている。

 今回取り上げた1点もその中の一枚である。パナマ帽をかぶり、白足袋に和服姿で風呂敷を持った道具屋の主人らしき人物は、いかにも大阪商人を彷彿とさせる姿で街を歩いている。コンタクトを見るとこの写真は1コマしかシャッターを切っていない。それは偶然の出会いで撮ったことを意味している。一瞬の出会いで大阪商人を表徴する作品に仕上げてしまうその力量は、まさにスナップの名人ならではの作品といえよう。

選・文=田沼武能(たぬま・たけよし)
1929年、東京・浅草生まれ。49年サンニュースフォトス入社と同時に、木村伊兵衛氏に師事。アメリカのタイム・ライフ社との契約を経て72年に独立。日本写真家協会の会長を20年間務め、現在、日本写真著作権協会会長。


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