雲取山登山で、頂上に到着した皇太子さま(当時)、雅子さま
雲取山登山で、頂上に到着した皇太子さま(当時)、雅子さま

 千葉県の鴨場でのプロポーズを経てご婚約し、1993年6月9日に結婚の儀が執り行われてから30年経った天皇、皇后両陛下。皇室番組に携わる放送作家のつげのり子さんが取材の現場で見てきたご夫妻の愛情あふれる微笑ましいエピソードを紹介する。

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「ご成婚30年ということでエピソードをいくつかピックアップしたのですが」というつげのり子さんが、真っ先にあげたのは、ご結婚3年目の95(平成7)年に雲取山(東京都最高峰)にご夫妻で登山されたときの話。

「雲取山荘の当時のご主人が『登山でお疲れでしょうから』と皇太子さま(当時)と雅子さまにカレーライスを大盛りにして出したそうです。皇太子さま、雅子さまともに『おいしい!』と召し上がってくださって、とても微笑ましいご様子だったとか。ところが、かなり大盛りだったようで、雅子さまがおなかいっぱいになって残されたのです」

 そこで天皇陛下がとった行動は、プロポーズの言葉「雅子さんのことは僕が一生、全力でお守りしますから」を有言実行する振る舞いだった。

「皇太子さまが『僕が食べてあげる』と、雅子さまとお皿を交換されて、全部きれいに召し上がられたそうです。山荘のご主人はお二人が召し上がっている場にいるのも失礼だと思い、離れたところから様子を見守っていたそうですが、本当にお優しい方だというのが伝わってきたと話していました」

 カレーライスのお皿を交換するという、とっさの行動は「まさに神対応ですよね」とつげさんは感嘆する。

「雲取山は標高が2017メートルで、山荘は山頂から20分ほど下ったところ、かなり高い場所にあるんです。ということは、カレーライスを作るには、そこまで食材を背負って、人間の力で運ばなくてはいけないので、かなりの労力ですよね。そんなカレーライスを残して無駄にしてしまうと申し訳ないという気持ちを持たれたのだと思いました。また完食できなかったことで雅子さまに恐縮する気持ちが残ってしまうといけないと気遣いもされたのでは。皇太子さまが雅子さまの残したカレーライスを召し上がったことで、山荘のご主人にとっても雅子さまにとっても、そして、それは皇太子さまご本人にとってもうまくいく、まさに三方良し。このエピソードを振り返ってみると、まさにこれは神対応だったと思います」

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「僕がいると気を使わせる」と天皇陛下が配慮を