居酒屋の「出禁」も甘く見ていると痛い目に…。画像はイメージ(GettyImages)
居酒屋の「出禁」も甘く見ていると痛い目に…。画像はイメージ(GettyImages)

コンビニエンスストアで迷惑行為を繰り返し、いわゆる「出入り禁止」を通告されていた男がまた店に入って逮捕されるという耳慣れない事件があった。居酒屋などでも「出禁」にされたのに、懲りずに店にやってくるような迷惑客がいるが、「出禁」を無視すると、今回の男のように罪に問われることがあるのか。

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 逮捕されたのは静岡県牧之原市の自称会社員の男(59)。報道によると、男は市内のコンビニエンスストアで客や店員に話しかけるなどの迷惑行為を繰り返し、何度も出入り禁止を通告されていたが、その後も来店していたという。

 店側は警察に相談。7日午前に来店した男を建造物侵入の疑いで現行犯逮捕した。

 珍しい事件だが、特にアルコールを提供する居酒屋などでは、迷惑行為を繰り返した客が「出禁」になるケースは多々ある。

 いわゆる赤ちょうちん系で、早い時間からにぎわっている東京・江戸川区のある居酒屋の男性店員はこう話す。

「ウチにも『出禁』になったお客さんは複数います。他の客に人懐っこく話しかけるけど、酒が回ると豹変して口論を始める60代女性とか、女性客ばかりに近づいて家の場所をしつこく聞き出そうとする40代男性など、他のお客さんからの苦情があった場合は出禁にしています。常連の間では、“有名人”ですよ」

 ただ、「出禁」を通告しても、その効果は心もとない。

「60代女性は何度出禁にしても、また平気な顔で店に来るんです。『だめだよ』って言ってもニコニコするだけで聞こうとしない。男性の方は犯罪につながりかねないので、次に店にやって来たときに、警察に連絡するよと言って追い返しました。それでも、たまに店の外から中の様子をうかがっていたりしていますよ」(同)

 近辺の飲み屋に詳しい常連男性によると、「出禁」になった男性は近所の別の居酒屋で、この店の悪口を言いふらすようになったというから、たちが悪い。

 この男性は不服だろうが、そもそも、店は迷惑客に対し「出禁」を通告する権利がある。村松由紀子弁護士がこう解説する。

「店は公的な施設ではなく、営利目的で私的に営業しています。店には営業の自由があり施設管理権がありますから、どのような客を立ち入らせ、どのような客を立ち入らせないかは原則として店の自由です。ドレスコードを設けている店があるように、居心地の良い空間を守るため、多少の迷惑行為であっても『出禁』とすることは可能です」

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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