写真はイメージです(Getty Images)
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作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、ネット上の国際ロマンス詐欺について。

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 国際ロマンス詐欺られ間近の日々である。

 現代社会を生きる多くの人と同様、私も、スマホ依存症気味の日常を送っている。一番時間を使ってしまうのは、Instagramだ。ラジオ番組の収録風景とか、私の会社が出展するポップアップの様子とか、商談の雰囲気とか、各界で活躍している女性たちとの記念写真とか……。「こんな仕事してます!」「こんな人たちと仕事してます!」「こんな本を最近読んでます!」な情報発信をするのだ。正直、この時間にいったいここに何の意味が……という気持ちはまだどこかにありながらも、毎日大量に流れてくる友人や知人、時には全く知らない人の食事や、旅や、仕事の様子を見ることは完全に私の習慣になってしまった。

 という状況のなかで、同世代の女性に聞きたいことがある。

 国際ロマンス詐欺られ対策、どうしていますか?

 インターネットの世界で、50代日本人女性な私は、恐らく、国際ロマンス詐欺の対象ど真ん中なのではないか。毎日のように、韓国や中国や中東諸国の男性から「素敵」「笑顔が美しい」という連絡がくる。たとえの写真を載せていても、「猫が好きな優しい女性」という連絡がくる。ジャムをつけただけのフランスパンの写真であっても「この料理はあなたがつくったのですか」と優しいメッセージが送られてくる。旅行先での自然を見せれば「美しいあなたは旅好きです。今度東京来ます」という連絡が、しなやかに厚みのある美しい筋肉を優しげにちらつかせる30~40代の男たちから送られてくる。きっとこういうのに返信してしまうと、次はさらに優しい褒め言葉が送られてきて、気が付くと恋をしていて、彼がお金に困っているのを見かねて一瞬で巨額を失う地獄が待っている……と聞く。

 こんな嘘みたいな言葉を吐く、実在するかどうかも曖昧な、きれいな男たちの甘い言葉に、なぜ引っかかってしまう女がいるのだろう……?と不思議な気持ちにはなるが、そういう「私は絶対に引っかからない」と思う者が詐欺にかかるのはよくある話だ。私だってわからない。外国人なのだから日本語がおかしいのは当たり前。外国人だから愛情表現がストレートでスピード感があるのかもしれない。そんな一歩を踏み出してしまう瞬間は、誰にでもあるのかもしれない。だいたいスマホ相手に時間をつぶしているような時など、心の隙間だらけなのだし。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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「日本人男性には詐欺られない」自信