浦和・伊藤敦樹
浦和・伊藤敦樹

 31年目のJリーグが開幕して1カ月半が経過した。早くも混戦かつ熱戦が展開される中、大卒では山田新(川崎)、中野就斗(広島)、泉柊椰(神戸)、木村勇大(京都)、寺山翼(FC東京)、近藤友喜(横浜FC)、林幸多郎(横浜FC)、高卒では荒井悠汰(FC東京)の新入団ルーキーたちが、すでにJ1デビューを果たしている。彼らの今後の活躍に期待すると同時に、ユースからの昇格とは異なるJ各クラブの「育成ルート」に注目したい。

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「高卒生え抜き」と言えば、鹿島だ。ジーコが注入した哲学の下、いち早くプロチームとして成熟し、これまでJ最多の通算20タイトルを獲得してきた常勝軍団。その地位を築く道程において高体連出身者が大きな役割を果たし、1995年に鈴木隆行(日立工業高)、1996年に柳沢敦(富山第一高)、平瀬智行(鹿児島実業高)、そして1998年には小笠原満男(大船渡高)、本山雅志(東福岡高)、中田浩二(帝京高)の“黄金世代”が入団。2000年にJ史上初の三冠達成を成し遂げた後も優れたスカウト力を発揮し、青木剛(前橋育英高)、増田誓志(鵬翔高)、興梠慎三(鵬翔高)らがチームの主力となり、さらに2006年に内田篤人(清水東高)、2009年に大迫勇也(鹿児島城西高)、2011年には柴崎岳(青森山田高)、昌子源(米子北高)と、のちのW杯戦士たちが続々と加入。彼らが早くからチームの主力となり、タイトルの数を増やしていった。

 もちろん鹿島に入団したすべての選手が活躍した訳ではないが、高卒入団からの成功例の多さは特筆すべきもの。ホームタウンの立地も含めて若手が育つ土壌、そして抜擢から定着へのノウハウが蓄積され、それがクラブの伝統と魅力になり、争奪戦になるような有望な選手が鹿島入りを選択するという良い循環が生まれた。ただ、近年はそのサイクルが停滞気味。2018年に安部裕葵(瀬戸内高)、2021年には荒木遼太郎(東福岡高)がベストヤングプレーヤー賞を受賞したが、彼らが海外移籍や故障などで思うような成果を残せず。他の面々も伸び悩み気味で、クラブは現在6年連続無冠と苦しんでいる。

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近年目立つ“補強ルート”は?