人間は忘却する動物だ。たくさん頭の中に詰め込んだ知識は、やがて薄れていく。時間が経過しても忘却しない人間がいたら、悲しい思い出もずっと脳内に残り、つらい人生を歩むことになるだろう。だが、クイズプレーヤーたちはそれぞれのやり方で忘却と戦っている。『史上初! これ1冊でクイズのことがまるっとわかる クイズ用語辞典』(三木智隆、石野将樹、徳久倫康 著/田中健一 著・監修)では、大規模クイズ大会の主催者が大量記憶の秘訣(ひけつ)を解説している。抜粋して紹介したい。

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 クイズによく出る事項などを、ずっと頭にとどめておく方法はあるのでしょうか。経験則からいうと、ありません。1年間、会っていない人の顔と名前が出てこないのと同じ現象が当てはまると思います。

 ではどうするかというと、1年に1回、その単語や概念と再会すると、抜け落ちそうになる知識を再び拾い直すことができます。本棚や引き出しの中を年に1回整理するように、頭の中も整理するのです。

 まとめて覚える多答クイズを例に挙げます。私の場合、日本の国民の祝日(16)、歌舞伎十八番(18)、日本の国立公園(34)などは全て覚えましたが、しばらく時間がたつと、正確にアウトプットができなくなります。なので、1年に1度、機会をつくって覚え直していました。ペンキがはげてきた建物の外壁に、もう一度ペンキを塗り直すような作業です。

 近年では、毎年2月頃に「知識検定」という1000問を5時間で解く検定試験(2023年は500問をPCやタブレットで解答する形式に変更)に合わせ、これらを全て言えるようにしました。最初に覚えるときはとても時間がかかりますが、1度忘れてから覚え直す行為は、半分以下の時間で、記憶を復活できます。年に1度の同窓会のように会って「歌舞伎十八番の諸君、久しぶり! 18人の名前をもう一度チェックさせてくれ」と再会を楽しむように覚え直します。

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「語呂合わせの天才」がいる