地上波ではあまりに砕けた解説は難しいが、ネット中継では表現の幅も広がってくる。辻氏はネット中継の“ゆるさ”に上手く適合した語り口でも好評となっているようだ。

 野球界を盛り上げるためには、競技の注目度が上がるような解説者を求める声も多く、ファンを楽しませることができる人物の誕生が期待されている。

「選手、関係者からすると『時代が違う』と思うような発言をする解説者が多い。名指しで的外れな批判をする人もいる。野球の質やトレンドをしっかり理解しており、現場の人間を含めて多くが納得できるような人物が解説をして欲しいという声は多い」(野球に詳しいスポーツライター)

 だが、少し保守的な傾向もある野球界では、なかなかな本田のような存在が生まれにくいという事情もあるようだ。

「テレビ、ラジオ、新聞を含め、野球メディアは旧態依然の部分が残る。年功序列で球界での実績やキャリアも重視される。また近年は解説者も飽和状態で、若い世代の解説者が食い込むのは至難の技。最近はYouTubeなどで自由に発言できるようになり、中にはバズる人も出てきてはいますが……」(大手広告代理店関係者)

「従来の野球解説者は実績と人間性、そしてコミュニケーション能力のバランスがとれた人材が少なかった。例えば、プロでの実績があれば自らの経験談を語ることが多い。明るく楽しいだけで解説の中身が薄く感じる人もいる。そして実績や人間性が良くても言葉で伝える能力が足りない。サッカーの本田は、その辺のバランスが良い」(在京テレビ局スポーツ担当者)

 では、仮にWBCのような国際大会などを盛り上げられるような解説ができる人物を野球界から挙げるとしたら、誰になるのだろうか……。

「面白い存在なのが渡辺俊介氏。第1回のWBCでは世界一に貢献し、国際試合の裏表を熟知している。現役晩年は米国独立リーグでもプレーし、様々なカテゴリーを経験しているのも大きい。独特の感性を持っており表現方法もユニークで、現在は指導者という立場から言葉の重要性も理解している。素晴らしい解説者になると思われる」(パ・リーグ関係者)

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野球界で“本田級”のインパクトを残せそうなのは…