少子化問題はバブル経済崩壊後、停滞する日本に表出した課題の一つにすぎないと、松川局長は言う。例えば、1990年以降、生涯未婚率の割合は急激に上昇している。

「未婚率の高さが少子化の大きな原因の一つですが、経済が停滞して、賃金の上がらない状況では明るい未来が描けない。結婚して、子どもを育てようとはなかなか思えないでしょう。ですから、少子化対策は単に子ども・子育て予算を増やして、家庭やこれから親になる若者たちの負担を軽くすればすむという話ではありません。根本的には、新しい産業を育てて、経済を成長させ、賃金を上げていかなければならない。それと並行して労働市場を流動化して、成長産業に人材が行き渡るようにする。時間や年数が主たる評価基準の日本型雇用をジョブ型に変えていく。家事や育児の分担をフェアにして女性が働きやすくする。さまざまな対策を総合的に進めていかないと、少子化問題は解決できないと考えています。こうしたすべての課題に対し、正面から、総力を挙げて、国も個々の人も取り組むべきときがきています。『挑戦する力』を今こそ発揮していかねばなりません」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)