エマニュエル・トッドさん
エマニュエル・トッドさん

■「世界大戦」を呼び寄せた人口と産業の発達

 ですから、第三次世界大戦の始まりと、第一次世界大戦の始まりを比較するのは面白いでしょう。しかし、人口統計学者としてすぐに気づくのは、第一次世界大戦につながった時代は、世界で人口とともに、産業と力が拡大していたことです。

 すべての主要関係国の人口は、劇的なスピードで増加していました。1850年から1950年までの英国で、ここではまるまる1世紀を見ていますが、2800万人から始まり、1950年には5900万人の人口になりました。

 日本も参戦しました。第一次世界大戦では少しだけでしたが、第二次世界大戦ではより当事者でした。1850年の日本の人口は3200万人でしたが、1950年には8300万人になりました。相当の拡大率です。同じ傾向がドイツ、ロシアにも当てはまります。

 フランスは特別なケースでした。出生率の低下が早く始まったので、フランスの人口増加率は低かった。それでも、フランスはダイナミックな国でした。飛行機や自動車の開発、映画など文化産業の発展に関わりました。第一次世界大戦前のフランスは、非常にダイナミックな国だったのです。

 米国に関しては、1850年に2400万人だったのが、1950年には1億5000万人に増加しました。当時の世界は、非常にダイナミックでした。そして、国家間の力のバランスの変化が、恐怖を生み出しました。

 フランス人はドイツ人を恐れ、ドイツ人はロシア人を恐れました。どの国も人口が拡大していましたが、増加率に差があったからです。

 しかし、現在の状況を見てください。国連による人口予測を2000年から2050年の期間でみてみると、関係する国の多くで人口はすでに減少しているか、これから減り始めます。日本の人口は1億2700万人から1億600万人に縮小すると予測されています。同じことがロシアにも当てはまります。1億4600万人から1億3600万人に減少します。ウクライナは4400万人から3500万人に減ります。フランスは微増です。

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”本物の戦争”がどこからやってきたのか?