千葉県松戸市にある県立小金高校(撮影/國府田英之)
千葉県松戸市にある県立小金高校(撮影/國府田英之)

 全国各地の中学や高校で、私服での登校を認める動きが広がりつつある。生徒の主体性を育むことや多様性の観点などから好意的に受け止められているが、過去には、服装を自由化した後にさまざまな問題が生じて一時は人気も落ちてしまい、制服を再導入した高校もある。私服に変えたことで、その学校の中では何が起きたのか。「服装の自由」がプラスに作用しなかったのはなぜなのか。関係者を取材した。

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 千葉県松戸市にある県立小金高校。作家の伊坂幸太郎さんやサッカー元日本代表の明神智和さん(同校サッカー部ではなく柏レイソルのユース出身)が輩出した進学校だ。生徒の自主性を重んじる自由な校風で知られる。

 小金高校は1993年度に制服を自由化した。

「女子の制服のジャンパースカートが、夏は暑すぎるため何とかならないかという話が持ち上がって、そこから生徒たちの動きが広がり、制服を自由化しようという流れができたようです」

 こう話すのは同校教頭の塩田隆さん(55)である。制服を再導入した2011年度に同校の教諭だった塩田さんは、生徒会の生徒たちと、服装を自由にしてから何が起きたか、その歴史を調べたという。

 千葉県の県立高校で服装が自由なのは、隣の柏市にある東葛飾高校だけ。県北部で一番の進学校である通称「東葛(とうかつ)」は自由な校風でイメージが良く人気がある。東葛にならってか、1993年当時、近隣の県立高校でも制服自由化の動きが生まれていたが、自由化にたどりついたのは小金高校だけだった。

「小金、人気が出るかもね」

 生徒たちが勝ち取った自由化。もともと自由な校風の小金高校らしい、前向きな動きとしてとらえられていた。

 だが……。

「レベルが下がったらしい」

「もう人気ないよ」

 地元でそんな声が出始めたのは、自由化から数年後のこと。

 塩田さんによると、事実、99年以降、志願者数が一気に減った。入試の倍率は1・6~1・8倍で推移していたが、2001年には1・2倍を切ってしまった。進学校には考えられない、定員割れさえもちらつく数字である。志願者はさらに減り、04年度には学級数が一つ減った。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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