大塚:読んでて、僕もちょっと気になっていました。「一人になっちゃいけない」というメッセージが強いじゃないですか。

三田:ええ。

大塚:実際に僕が医学生だったときも、ノートのやり取りや過去問が先輩から流れてくるなど、そういうことで試験を乗り切っていたところもあるので、一人になっちゃいけないなと思っていたんですが、改めて言葉にされると確かにそうだなと。サークルから入るところはけっこう僕もびっくりしました。

三田:そうですよね。僕もまず、医学のところから情報が提供されるのかなと思ったら、「まず生活面なんだよ」って言われて。そういうことかって(笑)。

大塚:面白いですね。なんか僕は自然に乗り切ってきているので、改めてそう言われるとそうだったなっていうことですね。それで先生、このマンガを描かれている中で医学生は特殊だなって思う面はありましたか?

リアルに描かれる解剖実習(c)Norifusa Mita / Cork
リアルに描かれる解剖実習(c)Norifusa Mita / Cork

三田:そうですね、最初に話を聞いた段階からすごく面白くて。「まず最初に何を勉強するの?」と同級生の彼に聞いたら、「まず骨だな」って。「骨をどうするの?」と聞いたら、「並べるんだよ」って言われて。「そうか、骨並べるのか」みたいな(笑)。

次に「2年生になったら何するの?」と聞いたら「解剖だよ」って言うんですよ。現役で入った子は2年生で19歳ですから、「19歳の子が解剖するの?」と聞いたら「そうだよ」と。

日本の医学教育は世界的に見ても珍しいらしくて、高校を出た子が医学部に入ってすぐ19歳でメスを握って解剖する。彼が言うには、「メスを握るのは、早ければ早いほどいい。手が固まらない若いうちにそういう道具は使ったほうがいい。そのほうがいずれ外科の技術にすごく役に立つ」と。なるほどそういうものかって。

それで解剖のシーンを描いたんですけど、そういうところで読者の皆さんに新しい発見をしていただければ、きっと医学に対する理解も深まるんじゃないかなって。そこはかなり詳しく描いたつもりなんですけどね。

次のページ
描けるときに全て描きつくす