水道橋博士さんとガーシー議員の席
水道橋博士さんとガーシー議員の席

 参院議員だった山本孝史さん。05年に胸腺がんが発覚し5月の参院本会議で、がん当事者であることを公表。がん対策基本法の早期成立を訴えた。

 07年7月の参院選の時には病状が悪化していたものの、比例で出馬し当選。職責をめぐって批判も起きたが、登院を続け同年12月に亡くなった。

「山本議員のがん患者としての訴えは、与野党を超えて支持されました。山本議員のように、病気や障害の当事者など国会議員には多様な人材が必要で、当事者が生きやすい社会や制度ができるように訴えていく必要があります。それが、休む期間は給与が大きく減ったり無報酬となるなら、再発の可能性があるがんや難しい病気の当事者は、議員の継続や、立候補がしづらくなってしまいます。結果、マイノリティの声が届かず、国会には環境に恵まれた世襲議員ばかりが増えてしまいます」(武蔵教授)

 ちなみに、お騒がせのガーシー議員に対しては、参院議院運営委員会が20日の理事会で、同議員が提出している海外渡航届を認めないと全会一致で決めた。

 会期中の無許可の海外渡航を巡っては、2013年に故・アントニオ猪木議員が北朝鮮にわたり、懲罰委員会が登院停止30日の処分を出した例がある。

 武蔵教授によると、ガーシー議員に対しても今後、懲罰委員会が開かれる可能性はあるという。

 ただ、

「最も重い『除名処分』は戦後、たったの2例しかありません。基本的には本人が辞職を決めない限り、国会議員を続けられてしまうのが現実です」(武蔵教授)

 批判されても国会議員に居座り続ける面々の一方で、病気による辞職を決断し、批判されている水道橋博士さん。

「うつ病を公表した水道橋博士さんは、精神疾患の当事者としての声を伝えられる可能性がありました。辞職はとても残念です。身体や心に障害がある方は日本の人口の7%以上もいて、難しい病気の患者さんもたくさんいます。こうした当事者がもっと国会議員になりやすくするために、政治家はどのような仕組みや配慮が必要かを真剣に議論してほしいと思います」

 武蔵教授はそう締めくくった。(AERAdot.編集部 國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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