MCを務める東野幸治
MCを務める東野幸治

 しかも、応募資格の1つとして「全国ネットの漫才賞レース番組で優勝していないこと」というのがある。つまり、『M-1』や『THE MANZAI』で優勝した芸人は出られないということだ。『THE SECOND』は、今までチャンスをつかめずくすぶってきた人たちに、文字通りのセカンドチャンスの機会を与える大会なのだ。

 ちなみに「結成16年以上」という数字は、明らかに「結成15年以内」の芸人だけが参加できる『M-1』を意識している。『M-1』に出られなくなった漫才師たちが、己のプライドをかけて挑む大会ということになる。

 すでに、ランジャタイ、ジャルジャル、スーパーマラドーナ、レイザーラモン、囲碁将棋、金属バット、プラス・マイナス、磁石、流れ星☆といった顔ぶれが参戦を表明している。

『M-1』は、漫才師であれば誰もが本気にならざるを得ないような一大イベントだった。彼らは普段のライブで演じている漫才とは少し違う「『M-1』で勝つための漫才」を必死で磨いてきた。それは相当な苦労を伴う作業だった、と多くの芸人が語っている。

 コンビ歴が15年を超えて『M-1』に出られなくなるのは、彼らにとっては「賞レース向けの漫才からの解放」を意味している。そこには多少の解放感や爽快感もあったはずなのだ。

『THE SECOND』は、そんなベテラン芸人たちを再び容赦なく戦いの螺旋に巻き込んでいく恐るべき大会となる。MCを務める東野幸治も、この大会について「『イヤな大会が始まったな』と思う芸人がたくさんいるやろうな」と語っていた。

 しかし、この大会にはそんなベテラン芸人への配慮も感じられる。それは、ネタ時間が「6分以内」に設定されていることだ。『M-1』の「4分以内」に比べると長くなっている。このぐらいの長めの尺であれば、「賞レース仕様の漫才」を無理に仕上げなくても、じっくり見せる普段通りの漫才で勝負できる。

『M-1』が圧倒的なメジャーコンテンツである以上、『M-1』と比較されるのは避けられないが、基本的には別物と考えるべきである。『THE SECOND』は、芸歴を重ねた漫才師が熟練の芸を見せる「大人のお笑いコンテスト」として楽しみたいと思う。(お笑い評論家・ラリー遠田)

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら