※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 親の介護をしている、またはしたことがある人から、異口同音に聞かれるのは「自宅(在宅)での介護は大変!」というフレーズです。なぜ、大変と感じるのでしょうか。そこには、「介護をするあなたの、人生への疑問がある」と介護アドバイザーの高口光子さんは言います。介護と「人生への疑問」、いったいどんな関係があるのでしょうか。

【写真】介護資格を取ったお笑い芸人はこちら!

*  *  *

■お金や時間、身体的キツさが大変なんじゃない

「自宅(在宅)での介護は大変」。親の介護を経験した人も、いま、真っ最中の人も、年齢的にそろそろ考えなければならない人も、誰もがもっている共通認識ではないでしょうか。

元気がでる介護研究所代表 高口光子氏
元気がでる介護研究所代表 高口光子氏

▼介護保険を使うにしても、経済的に何かと負担が増える、▼なによりも介護に時間をとられて、仕事や家事、育児との両立がぎりぎり、▼不眠、暴力、弄便(ろうべん、自分の便に触ったりする)、外出して道に迷うなどの認知症の問題行動で目が離せず、体力に限界を感じる……これまで自分たちの生活のことだけを考えて回していた日常が、親の介護が加わることによってがらりと一変し、経済的・時間的・身体的に大変になることは容易に想像がつくでしょう。

 しかし、いちばん大変なことは、このような、いわば「物理的」な負担ではなかったのです。

 私がよりよい介護のプロを目指してまだ勉強中だったころ、在宅介護中の家族を対象にした厚生労働省のアンケートの調査結果を目にしました。いまでも強く心に焼きついているのは、「在宅介護で、なにが最も大変ですか」という設問への回答です。第1位は「いつまで、何のために介護が続くのかわからないこと」でした。介護の目的を見失って迷子の状態になっている、それがいちばん「大変なこと」だったのです。

■娘・息子・嫁だから、親子だから、が揺らぐとき

 これは20年前の調査結果ですが、介護の現場にいて、それは現在でもまったく変わっていないと思います。

 介護をし始めて最初のあいだは、いろいろきついな、しんどいな、と思いながらも、「私は娘だから・息子だから・長男の嫁だから、親の介護をするのは当然」「これまで育ててくれた親を、今度は自分が介護するのは自然なこと」と言い聞かせ、周囲もそれに合意してくれての介護生活です。

著者プロフィールを見る
高口光子

高口光子

高知医療学院卒業。理学療法士として病院勤務ののち、特別養護老人ホームに介護職として勤務。2002年から医療法人財団百葉の会で法人事務局企画教育推進室室長、生活リハビリ推進室室長を務めるとともに、介護アドバイザーとして活動。介護老人保健施設・鶴舞乃城、星のしずくの立ち上げに参加。22年、理想の介護の追求と実現を考える「髙口光子の元気がでる介護研究所」を設立。介護アドバイザー、理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員。『介護施設で死ぬということ』『認知症介護びっくり日記』『リーダーのためのケア技術論』『介護の毒(ドク)はコドク(孤独)です。』など著書多数。https://genki-kaigo.net/ (元気がでる介護研究所)

高口光子の記事一覧はこちら
次のページ
より深いところから疑問が