信長公騎馬武者行列の観覧エリア周辺にはすでに多くの人が集まっていた
信長公騎馬武者行列の観覧エリア周辺にはすでに多くの人が集まっていた

 大勢の観客が集まるパレードに参加しても、松本はやっぱりどこか無愛想でムスッとしているし、気安く手を振ったりはしない。木村は木村で相変わらず格好つけているし、それが絵になっていてとてつもなく格好良い。決して「明るくニコニコ」とかではない。でも、そこがいい。

 テレビは人間を消費するメディアである。たくさんテレビに出ていると、芸能人は少しずつ身近な存在になってくる。視聴者は、家族や友人のように何回も顔を合わせているような錯覚に陥り、一方的に親近感を抱き、気安く考えるようになることもある。

 でも、本物のスターは、どれだけテレビに出ても決して消費されることがない。何度見てもそのたびに新鮮に受け止められ、そのまま価値を保つことができる。

 そうなっているのは、変わらないように見える彼らが密かにアップデートを続けてきたからだろう。自分の中の本質的な部分だけは一切変えずに、それ以外のことは時代に合わせてマイナーチェンジを繰り返していく。その手際があまりにも鮮やかなので、ほとんどの人はそれを意識することもない。

 スターは時代の壁をやすやすと超えてくる。ダウンタウンは面白い。キムタクは格好良い。30年前にそう思っていた自分が、今も全く疑いなくそう言い切れることは1つの奇跡である。テレビの影響力が落ちてきている中で、存在自体が見世物になる本物のスターがテレビから生まれるという現象は、ひょっとすると彼らの世代で最後になるのかもしれない。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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