女でいるということはなんて難しいのだろう。自分の生まれた国に疲れ、日本に疲れ、今、彼女は別の国で新たな生活をはじめている。そこだってもちろんパラダイスではない。でも、「性的にからかう」「すれ違いざまに見つめる」ことが、女性の安全を脅かす危険行為だと理解されている前提がある社会で(そういうのを先進国というんでしょうね)、感じるストレスの軽さは段違いだという。
私は仕事を通して様々な国の性産業の人とつきあってきたが、日本のエロの比重の大きさ、買春の気軽さと、若い女性や子どもたちの性的な搾取に罪悪感がない空気、そしてそれが隠されないことも含め、他の国とはレベルが違うと感じている。たとえば、制服姿のティーンを性的対象にする表現自体が禁じられている国もあるが、この国では制服が性的な記号として流通している。アダルトグッズショップなどでは、幼女の服や制服や靴下などが大きな売り上げを占めている現実がある。
先日、私の会社に女性向けの二次元エロでバイブを紹介しませんか、という依頼がきた。女性がつくる女性向けの二次元エロということなので、どういうものなのかとスタッフが対応していたのだが、商談したスタッフが「なにが女性向けなのかわからない」と、心から意味がわからないという調子で報告してくれた。スタッフが言うには、その会社は「わからせ」というジャンルを中心に制作しているという。
「わからせ」とはここ数年、エロの一ジャンルのように使われはじめた言葉で、女性や子どもに性的な暴行を加え、男に屈する様をいうらしい。男に“生意気な”ことを言う女性や子どもを性暴力によって黙らせる加害欲をむき出しにした「ジャンル」だ。女性を「メス」、子どもを「ガキ」と呼びつけ、男性器によって黙らせる暴力が「わからせ」だ。“女性を性暴力によって黙らせる”のはポルノの“主流”だろうが、「わからせ」という言葉で、それがまるで「しつけ」という「正当性」を加害者に持たせる不気味な暴力性が深まってしまっている。エロの底、完全にぬけた。