飛来する砲弾を迎撃するために設計されたイスラエルの防空システム「アイアンドーム」のミサイルが空を照らしている(提供=ニシム・オトマズキン)
飛来する砲弾を迎撃するために設計されたイスラエルの防空システム「アイアンドーム」のミサイルが空を照らしている(提供=ニシム・オトマズキン)

 北朝鮮によるミサイルが日本上空を通過したニュースを受け、イスラエル・ヘブライ大学のニシム・オトマズキン教授は、「イスラエルでは残念ながらミサイルは日常茶飯事」と言います。AERA dot.コラム「金閣寺を60回訪れたイスラエル人教授の“ニッポン学”」。今回は、イスラエルのミサイル対策について。

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 10月4日、北朝鮮が発射した弾道ミサイルが青森県付近の上空を飛びました。このようなミサイルを北朝鮮が発射したのは2017年以来ですが、今回もJアラートが作動し、北海道や青森などの対象地域では警報が鳴り、建物の中や地下への避難が呼びかけられました。結局、ミサイルは海に落ちましたが、今後、北朝鮮が何をしようとしているのか、強い懸念が残りました。警報を聞いた人々は、一体何をすればいいのか心配し、混乱したに違いありません。

 ところが、残念なことに、イスラエルはこのような事態に慣れきっています。イスラエル南部のガザ地区や、北側のレバノンから、イスラエルの各都市に向けて、時折、ミサイルが無差別に発射されるからです。その度に懸念が高まり、多くの人々の日常生活がかき乱されます。

 現在、ガザ地区を支配するパレスチナのテロ組織、ハマスは、この15年間 に、ジハードという別の過激派組織と共に、何百発ものロケット弾をイスラエルの街に向けて発射しています。これには恐怖感を広め、政治的な結果を出そうとする目的があります。これらのミサイルは人家に命中し、何十人もの死と破壊をもたらし、多くのイスラエル国民の間で懸念や敵意が高まりました。

 また、世界最大のテロリストの軍隊の一つで、イランが支援するヒズボラは、レバノンの支配地域に数千発のミサイルを保有しているといわれます。そして、それらは紛争時にイスラエルに向けて発射できるようにしてあるということです。一方、ハマスは、この2年間に、イスラエルの都市に向け、何度もミサイルを無差別に発射しています。ちなみに、2006年夏の第2次レバノン戦争で、ヒズボラがイスラエルに向けて発射したロケット弾の数は約4000発、1日平均にすると120発でした。

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Nissim Otmazgin

Nissim Otmazgin

〇Nissim Otmazgin(ニシム・オトマズキン)/国立ヘブライ大学教授。トルーマン研究所所長を経て、同大学人文学部長。1996年、東洋言語学院(東京都)にて言語文化学を学ぶ。2000年ヘブライ大学にて政治学および東アジア地域学を修了。2007年、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了、博士号を取得。同年10月、アジア地域の社会文化に関する優秀な論文に贈られる第6回井植記念「アジア太平洋研究賞」を受賞。2012年、エルサレム・ヘブライ大学学長賞を受賞。研究分野は「日本政治と外交関係」「アジアにおける日本の文化外交」など。京都をこよなく愛している。

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アイアンドームの迎撃率は95%