夏休みの「水泳学校」では、卒業生のコーチと集中特訓
夏休みの「水泳学校」では、卒業生のコーチと集中特訓

 水泳の指導は、夏期の体育の授業時間、そして夏休みにPTA「若桐会」の協力を得た水泳学校で行われている。スタート時の1年生は、水に顔をつけることを怖がる生徒もいて、当然個人差がある。それでも3年生の時点では、どの生徒も泳げるようになっているという。

「授業で常に意識しているのは、ここまで出来るようになろうと、目標を細かく区切ってわかりやすく示すことです。泳ぎが苦手な児童も、無理なく着実に取り組めるようにすることが大切です。自然と目標に向かって努力し、仲間同士で教え合うという姿勢が生まれています」(齋藤先生)

 ペアで練習する時間も多く、「もうちょっと顔を深くつければ、足が浮くよ」「私が腰を持っていてあげる」などと、真剣な声の掛け合いが聞こえてくるという。こうした学び合いが、泳ぎの上達を早め、遠泳行事での一体感にもつながるという。

 夏休みの水泳学校は1週間、約10人に1人のコーチがついて特訓するため、ぐんと上達する児童も多い。ここで、遠泳の技術も学ぶことになる。コーチは、かつて遠泳を経験した卒業生が担うので、相談相手にもなり、児童にとって心強い存在だ。憧れの思いを抱く児童も多く、そんな一人だったという大学4年生の女性今さんは、4年前から水泳学校の指導をしている。「コーチになるという強い思いを小学生のときから持ち続け、叶えました。卒業生として伝統を繋ぐという使命感があります」と話す。

 安全面はもちろんのこと水泳の楽しさを伝えたくて、指導にも熱が入る。おとなしい生徒がいて、なかなか話す機会がなく気になっていたところ、練習の最終日に手紙をもらったことがある。そこには感謝の気持ちが書き連ねてあり、とても嬉しかったという。また、「コーチからのメッセージカードは、子どもたちにとってお守りになるんです。」と見せてくれたのは、睡眠時間を削って手作りしたという、児童へのメッセージカードだ。水泳学校の最終日に行われる検定前に、コーチからメッセージカードを渡す習わしがある。カードには、一人一人に向けた泳ぎのアドバイスが書かれている。それを読んだ児童は、カードを水泳帽の中に大切に入れて、検定に挑むのだ。今さんも、かつて検定前に読んで、勇気づけられたという。

次のページ
富浦遠泳が人生のなかで特別な経験に