「後部座席には田口被告ひとりで、前の2人の町職員は『営業時間に間に合うか』などと電話ばかりで、田口被告に細かな説明はしない。いきなり会社や家まで来て、すぐについて来いといい、謝罪もない。そんな町役場の対応に、『いったいどうなっているんだ』という怒りが込み上げ、田口被告は『ちゃんと文書をほしい』と町職員に言ってその日は家に戻ったのです。そんな怒りでストレスがたまったと語っています」(山田弁護士)
そして、田口被告は以前に遊んだことがある、オンラインカジノに4630万円を振り替えることを思いついた。
山田弁護士が話す。
「犯行はまったく計画性はありませんでした。以前にオンラインカジノで遊んだといっても、田口被告はもともと大金を持っているような人物ではなく、何度か利用した程度で思いつきです。オンラインカジノで勝ったこともなかったそうです」
その後、阿武町にはオンラインカジノの決済代行業者から、金銭の被害回復がされている。
元東京地検特捜部の郷原信郎弁護士は、
「無罪主張は当然だと思います。最高裁の民事訴訟の判決でも、誤入金であっても一度振り込まれた預金は名義人に権利があると認めています。この(田口被告の)事件は日弁連(日本弁護士連合会)などでも論議されており、法的解釈が疑問視され、おかしいとの声があがっています」
と説明し、
「警察、検察は、阿武町が誤入金した金を、田口被告がオンラインカジノという違法なものに使ったのがけしからんとして逮捕したように見えます。いくらけしからんといっても、法律に該当しなければ罪に問えない。法的な解釈で検察も、電子計算機使用詐欺罪では難しいことをわかっているはずです」
と指摘している。
初公判では田口被告の母親が情状証人として出廷し謝罪。田口被告も被告人質問では、民事訴訟で和解した解決金の支払いに触れ、
「今月5万円返済しました。今後も続けます」と述べた。
あとは論告求刑、最終弁論で判決も近いと思ったが、山田弁護士によると、
「もともと論告求刑は11月でした。それを検察は12月まで待ってほしいといっています」
とのこと。
判決が注目される。
(AERA dot.編集部・今西憲之)