月経のある女性ならば、誰もがかかる可能性のある子宮内膜症。良性の疾患ではあるが、発症すると閉経まで経過観察が必要になる。月経痛などの症状に加え、不妊の原因にもなるため、早期発見、継続的な治療が大切だ。
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子宮内膜症の患者数は、子宮筋腫や子宮腺筋症といった病気を合併している人も含めると260万人といわれる。しかし病気を正しく理解しないまま放置している人が多く、実際にはこの4分の1~5分の1程度しか受診していないと考えられている。また症状が表れてから3~5年を経て受診する患者も多いという。
子宮内膜は子宮内側の表面を覆う粘膜組織だ。受精卵が着床すると妊娠するが、妊娠が成立しないと子宮内膜は血液とともに月経で排出される。
子宮内膜症とは、この子宮の内側を覆っている子宮内膜に類似した組織が、子宮以外の卵巣をはじめとするさまざまな臓器にとどまり、炎症を起こし、痛みが生じたり、他の臓器との癒着を起こしてしまう病気だ。
東京大学病院女性外科准教授の甲賀かをり医師はこう話す。
「子宮内膜症の確かな原因はわかっていませんが、月経血の逆流説が有力です。月経時に剥がれた子宮内膜が月経血とともに膣から体外へ排出されず、卵管を通っておなかの中へ逆流し、腹膜や卵巣などの粘膜組織にくっついて増殖するのでは、という説です」
月経が子宮内膜が逆流する機会となるため、一生のうちの月経回数が多くなると、子宮内膜症にかかるリスクが高まる。月経のサイクルが短い、初経年齢が早い、出産の減少で妊娠・授乳中の月経が中断する期間が短いなどで、近年は子宮内膜症にかかりやすい傾向にある。初経年齢が早くなったことで10代、20代前半の患者も増加傾向にある。加齢とともに悪化しやすく、さらに不妊の原因にもなるため、早期発見・早期治療が重要だ。
■タイプは主に三つ 不妊症の3~4割に
子宮内膜症の症状で最も多いのは月経痛で、患者の約9割が訴える。月経痛がある人は、ない人に比べて子宮内膜症のリスクが2・6倍高まり、月経痛が重く受診した人の約25%に子宮内膜症が見つかるという。