日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「患者目線のコロナ対策」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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「全数把握の手続きが大変だと報道で知りました。コロナにならないように、無理しないでくださいね」コロナの夏の感染拡大と連日の報道によるのでしょうか、高血圧や糖尿病など定期的に受診している患者さんから、このように心配されることが増えてきた今日この頃です。
8月末、岸田首相は全ての感染者を確認する「全数把握」を9月中旬にも全国一律で重症化リスクのある患者らに限定する方針を示しました。
先月中旬からでしょうか。夏の流行に伴う感染者の急増を受け、全数把握の見直しを求める声が次第に大きくなっていきました。しかしながら、その理由はもっぱら医療機関や保健所など医療提供者サイドの視点ばかり。患者さんにとっては、「全数把握」の見直しをしようがしまいが、関係のないことです。
患者さんに寄り添い不安を取り除けるように、そして患者さんにとって最適な医療を提供することを第一に考えて日々診療に取り組むようにしていますが、ワクチンや検査体制、隔離措置などを含む日本のコロナ対策は、どうも患者さんの視点に立って考えるという視点が欠けているような気がしてなりません。
日本のコロナ対策は、1998年に公布された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、感染症法)に基づき、厚生労働省や保健所を中心に行われています。感染症法では、コロナやインフルエンザ、結核や梅毒といった様々な感染症が、症状の重さや感染力などを考慮し分類されており、その分類に応じて、入院措置、就業制限、外出禁止令、入国審査、検疫措置といった様々な措置が規定されています。そうした措置を法に基づき講じることができるのです。