■疲れ目は放置すると様々な不調の原因に

「目が疲れる」「目が重い」「しょぼしょぼする」といった訴えは、誰でも日常よく経験する疲れ目の症状です。これは主に目の筋肉の緊張によって引き起こされます。

 私たちが物を見る時は、距離に応じて 水晶体の厚さを変えてピントを調節していますが、この調節は毛様体という筋肉が縮んだり緩んだりすることで行われています。長時間のパソコン作業など近くの物をじっと見ていると、毛様体がずっと緊張し続けることになり、筋肉疲労を起こしてしまいます。また、この状態で視点を違う場所に移した時にピントが合いにくくなり、目がかすんだり、ぼやけたりすることもあります。

 目の酷使による疲れ目は、通常はしばらく休息すれば解消しますが、休んでも疲れがとれず、症状が続く場合を「眼精疲労」と呼んでいます。眼精疲労では疲れ目の症状が重くなり、目の痛みや充血などが起こることもあります。目の症状だけでなく、肩こり、頭痛、胃腸の不調、疲労感、集中力の低下など全身の症状を伴うケースが多いのも特徴です。

 目の疲れは、度数の合わないメガネやコンタクトレンズの使用や老眼なども原因となる他、最近では「ドライアイ」によるケースが非常に多くなっています。また、ストレスや過労、睡眠不足などがあると症状が強く出やすく、実際はこうした要因が複数絡み合って起こると考えられます。目の疲れは心身の疲れのバロメーターととらえ、軽視しないことが大切です。

■パソコンやスマホの普及で急速に増えているドライアイ

 ドライアイは涙の量が不足して目の表面が乾燥する病気で、パソコンやスマホの普及と共に急速に患者数が増えています。ドライアイでは目の乾きやゴロゴロ感よりも「目の疲れ」を訴える人が多く、現代人の疲れ目の大きな原因となっています。乾燥した目は表面に傷がつきやすく、視力の低下や角膜の障害を招くこともあるため注意が必要です。

 パソコンやスマホを用いたVDT(visual display terminal)作業がドライアイを引き起こす理由は、画面の凝視にあります。集中して見つめている時は無意識のうちにまばたきの回数が減り、涙の蒸発量が増えて目が乾燥してしまいます。また、作業に集中している時は緊張して交感神経が優位になり、涙の分泌量自体が抑えられてしまうことも目の乾燥につながります。

 涙の量は加齢による影響も大きく、40代以降は分泌量の低下が顕著になって、目の乾きや疲れに悩む人が徐々に増えていきます。この他にエアコンによる乾燥やコンタクトレンズの使用、薬の副作用、ストレスなど様々なことがドライアイの原因となります。中には 糖尿病やシェーングレン症候群など全身の病気が隠れているケースもあるので、症状が続く場合は放置せず、受診してしっかり原因を確かめるようにしましょう。

■目も年齢と共に老化する40代以降に注意したい目の病気

 肌や血管が老化するのと同じように、目も年齢と共に老化していきます。誰もが避けられない老眼ですが、そのサインが現れ始めるのは一般に40歳前後からです。老眼は水晶体の弾力性の低下と水晶体の周りの毛様体の動きの低下により、ピント調節がうまくできなくなって起こるもので、近くが見えにくいという症状が現れます。

 また、40代以降に一気に増える目の病気に、白内障や加齢黄斑変性、緑内障、糖尿病性網膜症などがあります。これらの病気は最悪の場合失明につながることもあるので、「物が見えにくい」「視野が欠ける」「ゆがんで見える」など、見え方に違和感があれば早めに眼科を受診しましょう。糖尿病性網膜症は自覚症状がないまま進行することも多いので、糖尿病と診断されたら定期的な眼科検診を欠かず受けるようにしてください。

ドライアイはVDT作業、空気の乾燥、加齢、全身性の病気など様々な原因で起こります。
ドライアイはVDT作業、空気の乾燥、加齢、全身性の病気など様々な原因で起こります。
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