「子どもにしてみれば、虫歯を治してくれた親切な人、と受け取っているわけです」(小宮教授) 

 犯罪者は子どを相手にした「騙し」が成功するまで、必死になって試行錯誤を重ねる。たとえば、昔ながらの手口である「お菓子」をエサに誘ったとしても、子どもが騙されなかった場合、次は「欲しいものを買ってあげるよ」と試してみる。それでも騙されなければ、子どもの興味を引きそうなゲームや言葉などを、ネット検索で必死に探し出す。

 親にスマホゲームを禁止されている子どもならば、「お母さんに内緒でスマホゲームをさせてあげるよ」という誘い文句が心に響くかもしれない。「そんなの男の子しかやらないよ」と断られたら、ネットやSNSではやりの芸能人やアニメ、グッズを調べる。

「あそこで芸能人の〇〇がロケ番組の撮影をやっているよ」

 そんなふうに、誘い文句を変えることもあると小宮教授は言う。

 2人目、3人目で騙せなかったら、アレンジを加えて4人目、5人目と続ける。

「騙されずに逃げようとする子を力ずくで連れ込めば、騒がれて事件になる。自分を信じて素直について来る子どもに出会うまで繰り返すのです。相手が親切を装った犯罪者なのか、本当に親切な人なのか――。子どもがそれを見分けるのは不可能です。2017年に千葉県松戸市で、元保護者会長が顔見知りの小学3年生の女の子を連れ去り、殺害した事件もありました。声をかけてくるすべての相手を疑っていたら、子どもは人間不信になってしまう」

 では、どこに気をつけるべきかなのか。

 小宮教授が専門とする「犯罪機会論」の視点で分析すると、子どもが犯罪被害に遭いやすいのは「入りやすく見えにくい」場所だ。

 たとえば、不特定多数の人が集まる公園やレジャー施設などは出入りが自由だ。つまり、犯罪者も「簡単に入ることができ、子どもに近づきやすい場所」になる。

「注意してほしいのは、ほとんどの保護者が人の多い場所は安全で、人が少ない場所は危険と思い込んでいることです」

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携帯のGPSは「防止」にはならない