「中国はまだ台湾を攻撃する自信も余裕もない」 現地の市民が軍事演習を脅威と感じない理由

中国

2022/08/29 07:00

 私は8月3日から台北に滞在している。夏休みを生かした大学の長期調査研究で1カ月の予定を組んでいた。もともとは決めていたテーマでじっくり調査に専心し、久々の台湾滞在をエンジョイしようと思っていたのだが、そうもいかなくなった。

 3日に台北の松山空港に到着すると、同じ空港でタラップを駆け上がるペロシ米下院議長の姿が遠くに見えた。台湾のメディアは競って彼女のハイヒールの高さを報じ、その日の女性ニュースキャスターたちは、ピンクのジャケットに白のインナーというペロシ・ファッションに身を包んでいた。ペロシ・フィーバーの翌日からこの軍事演習だ。もしかすると、ペロシ氏の訪問ですっかり台湾の人たちは安心してしまったのかもしれないとも思った。

 確かにそれはあるだろう。ペロシ氏は「台湾を米国は見捨てない」と断言した。議会のパワーが強い米国の議長がそこまで言うのである。力強く台湾を励ます言葉だった。

提供Taiwan Presidential OfficeAPアフロ
提供Taiwan Presidential OfficeAPアフロ

 ただ、それだけではないようだ。台湾では1949年から今日までずっと、大陸の中国共産党から「いつか統一するぞ」とにらまれながら生きてきている。基本的には「内戦状態」ということである。防空演習も毎年きっちりやっているし、軍は志願制とはいえ、全男性に4ヶ月の軍事訓練が義務付けられている。BTSの兵役問題が世論を騒がしている韓国と似たところもあるが、基本的には、日本でとうの昔に歴史になっている「冷戦」がまだここでは終わっていないのである。だから、台湾の人たちは軍事的緊張に慣れているところが確かにある。

 いろいろ聞いているうちに、あるサラリーマンの友人がキーワードを口にした。

 「あれは紙老虎だから」

 紙老虎は、ペーパータイガー、つまり張り子の虎。見掛け倒し、ということだ。

 実は、そんな話を、国防部の関係者から聞いていたので、ピンとくるところがあった。

「初日は確かに緊張しましたが、海軍と空軍、ミサイルの動きだけだとわかったので、今回はそれほど慌てる必要はないと思ったのです」

 注目していたのは、地上軍の動きだという。つまり地上軍が動かなければ、台湾侵攻は実際には起きない、台湾の監視からその動きはないとわかっていたということだ。

 もちろん、サラリーマンのコメントはもうちょっと直感的だ。

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台湾人の玄人ぶりが一枚上手だった?

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